第42話
「‥‥実は、人に触れられることに抵抗があるんです」
傷の手当てをしている最中、そんな事実を吐露された私は手を止め固まった。
「‥‥え?」
今まさに触れているし、今までも運んでもらったり支えてもらったりと日常茶飯にしている。
「酷い時には嘔吐したりすることもあります。特に異性に対して。これは、以前の境遇による後遺症ですね」
貼り付けた笑みを維持する無名に対し、顔面蒼白になっていく。
まさか、今まで無名はそれを我慢して私の世話をしていたの?
もしそうなら、私は一体何てことをーー。
「ですが」
そんな私の思考を遮るように、続けた。
「小夜さんが相手だと、不思議と何の感情も湧かないんです」
「それなら、いいけど‥‥」
「はい。こうして一緒にいて、穏やかにいられるのは小夜さんだけです」
貼り付けた笑みではなく、自然に笑う。
「少し眠ります」
「そう」
「できれば、側にいていただいてもよろしいでしょうか?その方がよく眠れる気がします」
眠いのか、頼りなく瞬きを繰り返す無名。
椅子から立ち上がり無名の横たわるベットに腰掛けると、安心したように微笑み目を閉じた。
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