第16話
はっとして振り返ると、30代後半くらいの派手な装いをしている女が、異質な雰囲気を醸し出す男達に守られるようにして立っていた。
女は嘲笑うかのように醜く顔を歪ませて、蔑む眼差しを無名に向けている。
「10年ぶりかしら、人形の分際でよくも私の手から逃げ出したわね」
〝人形〟という単語といい、無名への態度といい、嫌な予感がする。
ーーまさか、この人が無名の前の主人だった人?
「‥‥無名?」
表情を凍りつかせ、微動だにしない無名の様子は明らかに変だ。
「その小娘はあんたの新しいご主人様ってわけ?落ちたものね。まあ、落ちるほどの地位もなかったけれど。底辺の中の底辺、所詮は玩具として使い捨てられるだけの消耗品だもの」
‥‥この女、一体何様なんだ。
どうしてこんなヤツに、無名が罵倒されないといけないのよ。
「あなたの方が、よっぽど穢らわしいじゃない」
「‥‥まさかあなた、私に向かって言ってるの?」
信じられないとでも言いたげな女の態度に吐き気がする。
「今の自分の顔を見てみなさいよ、あまりの醜さで驚くはずだから」
「‥‥なんですって?」
「無名が穢れてるって?なら、無名を穢したアンタは一生かかっても落とせないほどの頑固汚れね」
自分は穢れてると言った無名の自虐げな笑みが浮かんで、怒りが激しい波のように全身に広がった。
ーー許せない。
無名にあんな顔をさせた元凶であるこの女が。
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