第11話

(杏に恋人、俺から振ってたのに何でこんなに胸が苦しんだろう。)

 一か月前の二月十四日。親友の金鳥俊に怒られ、一年ぶりに白川杏に電話をした。すると、彼女には、もう新しい恋人ができていた。

 自分の時間が欲しい。そんな理由で彼女と別れ、一年間自分のやりたい事をしてきた。けど、心の隅にいつも彼女の影があった。

「瑞樹。はい、バレンタインデーのチョコ」

 二月十四日に彼女は、毎年チョコをくれた。彼女は、料理は、得意だが、お菓子作りだけは苦手だった。だからチョコは、いつも店で買っていた。けれどチョコには、決まってメッセージが書いてあった。

{瑞樹大好きだよ}

 別れを告げたあの日。彼女はすぐ了承してくれた。

 けど本当は、「瑞樹の馬鹿。なんで」とか言ったかったのかも知らない。

 彼女じゃぁないからわからないけど…

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