第7話

1年前ぶりに白川杏の電話番号に電話を掛ける。

 彼女の電話番号、メールアドレス、二人で撮った写真は全て一年前に消去した。でも、番号は今も覚えている。

「…もしかして、瑞樹くん?」

「……苺ちゃん」

 電話口から聴こえてきたのは、白川杏ではなく、彼女の友人の宇田川苺だった。

「瑞樹君! 久しぶり! 元気だった?」

 久しぶりに訊いた瑞樹の声に、苺のテンションは爆上げ。

「うん。苺ちゃんは?」

「私も元気だよ? あぁ! もしかして杏に用事?」

「……うん。ちょっと、杏と電話代わってくれないかな?」

 瑞樹の「杏」と言う言葉に、

「……瑞樹君?」

「ん?」

 さっきまでとテンションが違う苺に、瑞樹は違和感を覚える。

「……瑞樹君って? まだ? 杏のこと好き?」

「すすす好きな訳ないじゃあん!」

 突然の「杏のことまだ好きの?」発言に、思わず声が裏返る。

「……そうだよねぇ? ゴメンねぇ? あのねぇ? 瑞樹君。杏はいま、彼氏とデートに行ってるんだ!」

「……そうなんだ」

 苺から、告げれらた「杏に新しい恋人」に、瑞樹は、自分から振ったのに大きなショックを受ける。

「……瑞樹君?」

 心配そうに声を掛ける苺。

 そんな彼女を心配させないように…

「あぁ……ごめごめん。杏、昔から可愛いかったからねぇ? 振った元カレが言うのもなんだけど! あぁ! そうだ! だったら苺ちゃん。杏に伝言頼んでいいかな?」

「伝言? いいですよ?」

「明日? 杏、誕生日だろう?」

「あぁ!」

 いきなりニヤニヤし始める。

「苺ちゃん?」

 電話越しで急に笑い出した苺に、瑞樹は彼女の名前を呼び掛ける。

「瑞樹君。こっちも条件出してもいいですか? 瑞樹君の代わりに私が伝えるんだから。それぐらいしてもいいでしょ?」

「……うん。解った。でも、難しいのやめてよ!」

「大丈夫だよ! 私の質問にただ答えてくればいいから」

「質問?」

「そう質問。ねぇ? 瑞樹君。、どうして杏と別れたの?」

「…それは…」

 言えるわけがない、自分の時間が欲しくて杏と別れたなんて。言える訳がない。

「あぁごめん。私ったらつい、いつもの癖で、また、杏に怒られる所だったよ? 瑞樹君。いまの質問忘れて」

「…苺ちゃん?」

「じゃあ、杏が戻ってきたみたいだから切るね? 伝言、杏に伝えとくね?」

 電話を切った後、瑞樹は、しばらく画面を見つめていた。

 ☆

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