第7話
1年前ぶりに白川杏の電話番号に電話を掛ける。
彼女の電話番号、メールアドレス、二人で撮った写真は全て一年前に消去した。でも、番号は今も覚えている。
「…もしかして、瑞樹くん?」
「……苺ちゃん」
電話口から聴こえてきたのは、白川杏ではなく、彼女の友人の宇田川苺だった。
★
「瑞樹君! 久しぶり! 元気だった?」
久しぶりに訊いた瑞樹の声に、苺のテンションは爆上げ。
「うん。苺ちゃんは?」
「私も元気だよ? あぁ! もしかして杏に用事?」
「……うん。ちょっと、杏と電話代わってくれないかな?」
瑞樹の「杏」と言う言葉に、
「……瑞樹君?」
「ん?」
さっきまでとテンションが違う苺に、瑞樹は違和感を覚える。
「……瑞樹君って? まだ? 杏のこと好き?」
「すすす好きな訳ないじゃあん!」
突然の「杏のことまだ好きの?」発言に、思わず声が裏返る。
「……そうだよねぇ? ゴメンねぇ? あのねぇ? 瑞樹君。杏はいま、彼氏とデートに行ってるんだ!」
「……そうなんだ」
苺から、告げれらた「杏に新しい恋人」に、瑞樹は、自分から振ったのに大きなショックを受ける。
「……瑞樹君?」
心配そうに声を掛ける苺。
そんな彼女を心配させないように…
「あぁ……ごめごめん。杏、昔から可愛いかったからねぇ? 振った元カレが言うのもなんだけど! あぁ! そうだ! だったら苺ちゃん。杏に伝言頼んでいいかな?」
「伝言? いいですよ?」
「明日? 杏、誕生日だろう?」
「あぁ!」
いきなりニヤニヤし始める。
「苺ちゃん?」
電話越しで急に笑い出した苺に、瑞樹は彼女の名前を呼び掛ける。
「瑞樹君。こっちも条件出してもいいですか? 瑞樹君の代わりに私が伝えるんだから。それぐらいしてもいいでしょ?」
「……うん。解った。でも、難しいのやめてよ!」
「大丈夫だよ! 私の質問にただ答えてくればいいから」
「質問?」
「そう質問。ねぇ? 瑞樹君。、どうして杏と別れたの?」
「…それは…」
言えるわけがない、自分の時間が欲しくて杏と別れたなんて。言える訳がない。
「あぁごめん。私ったらつい、いつもの癖で、また、杏に怒られる所だったよ? 瑞樹君。いまの質問忘れて」
「…苺ちゃん?」
「じゃあ、杏が戻ってきたみたいだから切るね? 伝言、杏に伝えとくね?」
電話を切った後、瑞樹は、しばらく画面を見つめていた。
☆
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