意地チョコ

第2話

白川杏は、いまとても困っている。

 夕飯の買い物でスーパーに来たら…

『二月十四日は…バレンタインデー。恋人にチョコで想いを届けよう!」

 スーパー中に響く甘い放送、商品棚に並ぶたくさんのチョコ。

 そして、追い打ちをかけるように、杏の前にいま、一番会いたくない人物が姿を現す。

「あれ? 杏もバレンタインのチョコ買いに来たの?」

 宇田川苺。

 彼女は、同じ専門学校に通う同級生で、高校時代からの友人。

「違うよ。夕飯の買い物」

 苺に証拠とばっかりに、買い物かごの中を見せる。

「本当だ。だったら、どうしてバレンタインデーのコーナーにるの?」

 苺は、同じクラスに付き合っている恋人がいる。

 でも、彼女は料理が苦手だ。

 だから、チョコも手作りではなく、売っているものを渡している。

 杏は、目の前にあったチョコを手に取ると苺の質問に答えた。

「私、このチョコが好きなの。だからここにいたの。じゃあねぇ」

 急いでその場を離れようとしたら、苺が何かを思い出したように叫んでくる。

「今年は、瑞樹君に、チョコあげないの?」

 瑞樹とは、杏の元カレ。

「あいつの話しはしないで! それに、私、バレンタインデー興味ないから!」

「……」

 何も言えない苺。

 無言で去って行く杏を見送る。

 苺の元を離れ、レジで会計を済ませた杏は、そのまま家路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る