第3話

男性刑務所 

「泉石? いつもの奴からの手紙か?」

※美緒からの手紙は、12月10日に、西條侑李の定期便と一緒に刑務所に届けられ、侑李からの希望で出所前日の18日に渡された。

 西條侑李から、毎月定期的に届く美緒に関する手紙に、今回はその美緒からの手紙も一緒に混ざりこんでいた。

 5年間で、美緒からの手紙が届いたのはこれが初めてだった。

 渚は、そんな美緒からの手紙を目に涙を堪えながら読み終えた。

 すると、4人部屋で一緒に刑務所生活している渚よりも10歳以上年上の受刑者、並木翔馬(なみきしょうま)が声を掛けてきた。

※渚は、岡宮永輝含む4の人間への脅迫の罪と元アイドルの穎川泉への盗撮、盗聴の罪で5年の実刑判決を受けた。

「……あぁはい」

 渚は、男性に色々訊かれたくないので、そのまま「はい」と答えた。

 並木は、渚の返事を訊くと、何故か渚の隣に座り直す。

「なぁ? 泉石。俺も含め、ここに居る奴らは皆何かしらの罪を犯してる。でも、同時にその罪を償おうとしている。でも、どんなに俺達が罪を償っても、どんなに刑期を終えて社会に戻ったとしても、世間は俺達を許してはくれない。俺は、愛する妻と子供を突然襲ってきた犯人から守る為いえ、自分は危うく相手を殺してしまう所だった。そして…」

 そこで、言葉を一度切り上げ、今度は、泉石の真っ正面に座る。

「…」

 並木翔馬(38)は、家族と出かけた旅行先で、突然自分達の事を襲ったきた犯人から家族を守る為に、お土産で買っていた家族みんなで作った花瓶で犯人の頭を殴って大けがを負わせてしまった。

 勿論、自分達家族を襲った犯人は、けがの治療の為に病院に連れて行かれた。

 そして、並木は、犯人に正当防衛とは言え犯人である男性に大怪我を負わせてしまった殺人未遂の罪で3年の有罪判決を受けた。しかし、彼ら家族を襲った犯人側の男性の両親が並木の無罪を訴える嘆願書を警察に提出した事で、1年の執行猶予付きの判決に変わった。

 だけど、その犯人家族からの嘆願書を並木は断り、始めの判決通り3年の有罪判決を受け入れた。 

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