タイトだが、裾だけふわりとしたデザインのワンピース。それは、異様なまでにその女に似合っていて、白い肌によく映えていた。



女は姿勢よく座りメニューを見ることもなく「エスプレッソマティーニを」とウェイターへ伝える。



そしてウェイターが去ると、静かに本を開く。



姿勢よく座るその女は、俺が出会ってきた派手で自分に自信のある女たちとは違って見えた。



触れたら消えてしまいそうな儚さ。まるでその女ひとりだけ違う世界にいるような、独特な雰囲気。気安く声をかけられない、品の高さをその女から感じる。



その時俺は、言いようのない胸のざわつきを感じた。



その女をずっと見ていたいと思った。その漆黒の瞳にうつるやつは、一体どんなやつなんだろうと。



どんな声で名前を呼び、甘えるのか。白い肌はどんな体温をしているのか。



知りたい─。



一瞬にして沸き上がる感情。



何にも興味のなかった俺が⋯、初めて誰かを知りたいと思い、強烈に惹き付けられている。



自分でも信じられないその感情は、自分でどうにかできるものでもなく。



あぁ、やっと見つけた─と思った。

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