第75話
「久遠さん!」
待ち焦がれてた人物がまさかの堂城誠也だったので、スマホをジャケットに内ポケットに戻し、足元に置いていたカバンに手に取り、会議室から出て行こうとしてしたら、堂城が申しなさげに自分に声を掛けてきた。
「ああの? 自分の勘違いだったらすみません。もしかして……じ」
「スマホの落とし主のことはなら待ってませんよ? 仕事関係に方に電話していただけですよ? 」
本当は、待っていた。
でも、相手が相手なので嘘をつく。
「そそうですよねぇ? すみません。じゃあ? 失礼します」
「堂城副編集長?」
自分の横をすり抜けて、先に会議室から出て行こうとした堂城を久遠が引き止める。
「市宮さんから訊きました。この度は、ご結婚おめでとうございます」
「えっ? あぁぁありがとうございます。けど、実際、妻と結婚したのは3年前なんですけどねぇ?」
久遠の言葉に、頬を緩まされる。
(……3年前? って言うことは、市宮は……)
堂城から告げられた「3年前」と言う真実に言葉を失う。
「久遠さん?」
「あぁすみまっせん! 堂城副編集長は……」
「確かに、久遠さんの言う通り、百花は、自分とって初めての後輩だよ? それも直属の。でも、だからと言って彼女に恋愛感情を抱くことはない。だって、今の俺は、既婚者で、妻(樹利亜)以外の人間を愛するつもりも護るつもりもないので。それに……」
久遠の言葉を奪い取った堂城が、「死神時代」の悪魔笑みを浮かべながら、自分の顔を久遠の顔ギリギリまで近づけ……
「元死神兼犯罪者(略奪愛)と結婚したい女性及び男性は、この出版社にはいないんと思うよ? 久遠さんは、俺と結婚したいですか? したくないですよね? だから、俺が妻以外の女性及び男性と結婚することは最初からありえないんです。じゃあ? お疲れ様でした」
反応を待たずに、久遠の横をすり抜けて今度こそ会議室をあとにする堂城。
一方、独り、残された久遠は、その場に崩れ落ちる。
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