第8話

「!」

 声が聴こえた方を振り返ると、市宮百花がお弁当をを持って立っていた。

 ※百花が立っていたのは、東のエレベーター側の出入口。

「堂城先輩? いやぁ? 堂城晴海副編集長もお昼ですか?」 

「……百花?」

 百花に、先輩ではなく、副編集長と言われ、思わず言葉に詰まる。

 確かに、今の百花からしたら、自分は先輩ではなく、他の部署の副編集長だ。

 けど……

「……死神には、これまで通り、かわいい後輩として、接してやらないと呪い殺されるぞ!」

「!」

 今度は、自分と百花がいる場所から最も離れた南側の出入口(階段)から、スーツを着た水川紘がエナジードリンクを飲みながら(左手にはもう1本別のエナジードリンク)、屋上に入ってきた。

「水川副編集長!」

「水川」

 突然の水川に、百花と堂城は、同時に水川の名前を呼ぶ。

 そんな二人に、名前を呼ばれた水川は、どういう訳ニヤニヤしながら二人の元に来て、

「おう! 息ぴったり! やっぱり、元先輩後輩だけはあるなぁ」 

「水川副編集長! どうしてここに?」

「えっ? お昼休憩だけど? そんなことより? 市宮お前こそ、堂城をこんな事を連れ込んで浮気か? 旦那に怒れても知らないぞ!」

「ちち違います! 私は、ただ、屋上でお昼を食べようと思っただけで、そしたら、堂城先輩が珍しく弱音を吐いている所に遭遇したので、話しを訊こうとしたんです」

 両頬を真っ赤に染めながら、水川の言葉を否定する百花。

「ふ~ん。市宮がお悩み相談ねぇ? 俺、今日、傘持ってきてねぇ!」

 雲一つない空を見上げてながら、傘の心配をする。

「なんで! 私が、先輩の話しを訊こうとしただけで、雨が降るんですか!」

 水川の腹に、強めのぐうパンチを食らわす。

 その場にしゃがみ込み水川。

「……百花?」

 ☆

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