第30話

泉石渚が、七瀬龍治、穎川泉に近付いた理由は…彼らが渚が捜し求める古閑美緒、彼女につながる重要な手掛かりを持っていたから。

 それも、渚が最も欲しくて堪らない情報、人脈だった。

 だから、俺は、強引に裏の仕事(相棒)に巻き込んだ鳴海坂昴に、本来の目的を告げず彼らの弱み、交友関係を調べさせ、その情報を元に彼らを揺すり、彼女に対する情報を訊き出した。

 しかし、七瀬龍治は、キャリア刑事だけはあり、そう簡単には情報を教えてはくれなかった。

 それどころか、逆にこっちらも脅してきた。

『……君が、僕個人の探偵になってくれるんだったら教えてあげてもいいよ。あぁ! 僕の弱みを調べ上げた君の相棒くんも一緒なら尚更最高かな?』

けれど、彼がこちらも脅してくるのは、昴の事前の調査で問題の範囲だったので、驚く事もなく、用意していた例の書類を彼に突き付けた。

それは、七瀬龍治が絶対反撃できない最高級の弱み。

渚は、それを武器に、七瀬龍治から彼女に関する情報と刑事と言う大きな駒を手に入れた。

 ※穎川泉に近付いたのは、ホワイトハニーファン交流サイト、「ホワハニ」ファン公式SNSにメッセージを書き込んだり、握手会、イベントなどで他のファンと一緒に撮ったと思われる写真をよく投稿していたから。

 そして、その投稿写真に、ここ一年、よく、穎川泉が写りこむ事が多くなってきた。

 だから、ホワハニのライブに、弱みを握った七瀬龍治と参加し、出待ちするファンに混ざって、穎川泉にファンレターと称した招待状を渡し、後日指定された場所にやってきた彼女に、七瀬龍治との恋愛関係をチラつかせ、古閑美緒の情報を引き出した。

「渚! そして、君は、偶然発見したんだ。この人たちが発行している雑誌に彼女の名前を。だから…」

「やめろ! それ以上彼女の名前を口にするな!」

 _ドン_

 大きな音が響き渡る。

 渚が、昴をおもいっきり強い力で壁に押しつけた。

 その衝撃で、渚の首元から、ロケットネックレスが外れ、運悪く、二人の言い争いに、何もできず呆然と立ち尽くす堂城の足元に、狙ったかのようにそれが飛んで行った。

「……彼女は…まさか…あの時の……」

 足元に落ちてきた中身が開いたロケットネックレス。

 その中に入れてあった写真に写る女性に堂城は、思わず言葉を失った。

_あの人に…彼だけには、私がここに居る事を知らせたくないんです。私は、彼を彼の為にも忘れないといけないんです。渚君がいまでも大好きだから_

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