第11話

一方、店に一人置いてけぼりにされた昴は、渚が足元に落としていったメモ用紙を拾い上げ、一人不気味な笑みを浮かべていた。

(…本当、お前って最低な奴だよ)

※メモに書かれていた渚が昴に、頼んだ内容。

 _クロユリ花束を用意しろ!_

 鳴海坂昴は、普段花屋でアルバイトをしている。

 そんな彼でも、クロユリを見た事は、ほとんどない。

 その理由は、クロユリの花言葉が……「純潔」「威厳」など、幸せを現す花言葉の白ユリとは異なり、「愛」「呪い」「復讐」「狂おしい恋」「恋の魔術」「ときめき」「独創的」こっちの花言葉は、相手への愛が深すぎるからこそ、いつの間にかその愛自体が呪いに転じてしまう。

 そんな理由からで、クロユリは不吉な花と呼ばれている。

※ウェブサイトからの引用。

 それなのに、相棒である泉石渚は、自分の同期で、恋人を上司に奪われた男に、クロユリを一輪じゃあなくて束で渡そうとしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る