第25話
広告会社 美緒の職場
「芹川さん!」
「美緒ちゃん。ごめんねぇ? こんな朝早くに呼び出して」
美緒が急いで職場に向かうと上司の芹川祐樹がこっちに手を振りながら自分の事を待って居た。
「いぇ。芹川さん。いったいなにがあったんですか?」
「…美緒ちゃん。結婚する気ない?」
「えええええええええええ!」
勤務開始が午前9時からなので、職場には自分達二人しかいない。
だから、美緒の大きな声を他の社員に、訊かれる事はない。
「美緒ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫じゃあないですよ! いったい何の冗談ですか? 全然笑えないですけど!」
美緒は、上司である芹川の言葉に、なんの冗談ですか? 笑いながら返事を返す。
確かに、芹川さんには、誰と結婚したかは告げていない。
けど、1年前に結婚したことは、報告済みだ。
それなのにどうして?
「えっ? 美緒ちゃんって……独身だよねぇ?」
「なに言ってるんですか? 私、1年前に結婚してますよ! それどころか、芹沢さんにも報告したじゃないですか? 私、結婚しましたって」
美緒のこの発言に。その場に崩れ落ちる芹川。顔は、真っ青。
「…どうしよう。私……ごめんなさい!」
「芹川さん!」
美緒は、崩れ落ちた芹川の胸ぐらを掴む。
「なにがごめんなさいなんですか!」
「…会社の為だったの! ごめんなさい! 美緒ちゃん!」
会社の為に自分は、依頼人に結婚相手として自分が知らない間に、差し出されていた。
それも、ウェブサイトに小さく載っていった自分の写真に一目惚れした会った事もない10歳も年が離れた男性に金の為に売られた。
私の意思なんて全く関係ない。
それよりも、信用してた人達に裏切られた事が一番つらい。
あぁ、ここにもう私の居場所はない。
「…芹沢さん。今日までありがとうございました」
手に持っていたカバンの中から資料を取り出し、その場でビリビリ破り捨てた。
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