第57話
※現在の時刻に戻る。
「 ちょっとと樹利亜さん!? なにかあったんですか?」
あの日の再会以来、再び音信不通になていた樹利亜から自分あてに突然電話が掛かってきた。
だから、灯は、躊躇う事なく彼女からの電話に出た。
しかし、電話口から聞こえてきたのは、彼女の悲鳴にも受け取れる声だった。
『…灯さん。私…どうしよう…」
嘘だよね? 灯の頭に中に最悪なシナリオが…ドンドン浮かんでは消えてゆく。
答えを求めたいのにそれを同時に訊いてはいけないと止めようとする自分が居る。
そんな板挟みに押しつぶされながらも、いまここで彼女を逃がしたらきっと後悔する…そう自分に言い聞かせて彼女を名前を呼ぼうと心に決めた瞬間…
『灯さん。どうしたらいいと思う? 彼から、元旦那にもう一度会って欲しいってお願いされたんだけど、私、旦那にはもう二度と会いたくないの。ねぇ? 灯さん? 私どうしたらいいと思う?』
「…」
灯は、ますます混乱した。
(えっ! 樹利亜さん七瀬龍治とは離婚したんだよ? なので、彼と会う必要があるの? それに樹利亜さんに七瀬龍治と会う事を勧めてる彼って誰? ままままさか…)
灯の頭の中に、さっきまで考えていた最悪なシナリオよりももっと最悪なシナリアが頭によぎる。
_ゴクリ 唾を飲み込む_
ゴクリと唾を飲み込、大きく深呼吸をしてから…
「…ねぇ? 樹利亜さんその彼って…ど」
その彼ってまさか堂城誠也さんと口に出そうとした瞬間…電話口から慌てて否定する樹利亜の声が聴こえてきた。
『あぁ! ごめん! やっぱり今の言葉忘れて!』
「樹利亜さん!?」
急に今の言葉は忘れて言われて灯は、慌てて樹利亜の名前を呼ぶ。
『…灯さん。私来年再婚するんだ堂城誠也さんと。じゃあ今日は、突然電話して本当ごめんね?』
「じゅ樹利亜さん!?」
_ぷち_ 電話が切れる音。
それを最後に、樹利亜からの電話は切れた。
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