第26話

※樹利亜と堂城のデートの略奪結婚で触れているので、そっちらをお読みください。

 5回目のデートから3週間後。

 その間に、巻き込まれたある出来事がきっかけで、樹利亜が七瀬龍治と離婚した事を知った。

 そして、季節は移り変わり、自分の誕生日である11月12日を迎えた。

「…先輩!? 堂城先輩!?」

(俺は、何をやっているんだ! 樹利亜にあの頃みたいに笑って欲しくて、リナリアの花束まで贈って、もう願ってはいけないのに彼女からのキスまで求めるなんて…最低だ。だって求めるだけ求めて、俺は、君をどん底に突き落とした。それなのに、君は…)

「…堂城先輩!」

 誰かが、俺の名前を呼んでいる。

 ここは、俺の部屋? なのに、どうして、俺以外声が聴こえるんだ? 

「先輩! 寝てるんですか?」

 今度は、覗き込んできた?

 君は、誰? どうして、僕の部屋に勝手に入ってこれた。

 堂城を捜しに人物は、中々起きない、彼に、徐々に怒りが込み上がってきた。

「先輩! いい加減起きて下さい! 私だって、暇じゃないですから!」

 !? もしかして、さっきから自分の事を呼んでいるのって…

 堂城は、ゆっくりと瞼を開く。

「…春ちゃん?」

「春ちゃんじゃあないですよ! 堂城先輩! 犬塚編集長が呼んでますよ!」

 滝川の口調がさっきまでの優しい口調から、少しだけ怒り口調に変わる。

 でも、それに気づいていない堂城は、普通に返事を返してしまう。

「編集長が? 俺なにかした?」

「知りませんよ! 私は、編集長に頼まれて先輩を捜しにきただけですから。先輩! そんな事よりその電話早く出た方がいいですよ? きっと電話の相手編集長ですよ」

 滝川からの指摘で、堂城は椅子に掛けていたジャケットを手に取り、胸ポケットから慌ててスマートフォンを取り出し、恐る恐る通話ボタンを押す。

{…はい堂城です}

{堂城君! 今どこに居るの! 今すぐ戻ってきなさい!}

 堂城が、電話に出るなり電話口から犬塚編集長の怒号が聴こえたと思ったら一方的に切れた。

 堂城は、そのままジャケットに袖を通すと、自分の事を捜しにきてくれた滝川に一言お礼を言うと、自分が副編集長として在籍する「晴海」で、どういう訳か自分のことをお怒りモードで待つ、犬塚編集長の元に駆け出す。

 ※雫丘出版には、4つの部署があり、各部署には、編集長と副編集長が、一人ずつ在籍はしている。

 犬塚は、雫丘出版全体の編集長。

★★

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