第10話
※現在の時間に戻る。
「樹利亜さん?」
「あぁ! ごめんなさい」
リナリア…樹利亜の中に、7年前の堂城誠也との思い出がドンドン浮かんでくる。
あの日は、結局堂城君の好きな花も訊けずに、私の一世一代の告白も気づいて貰えなかった。
「大丈夫ですか? よかったらこれ…」
「えっ!」
渚から差し出されたのは…いま巷で大人気の人気アイドルグループ:ホワイトハニーと不思議のアリスがコラボした数量限定ハンカチ。
そして、その中でもとくに数が少なく、手に入れる事が不可能なアリスの恰好をした人気ナンバーワン:穎川泉がデザインされた超プレミアハンカチ。
何を隠そう樹利亜は、穎川泉の大ファンなのだ。
「なななぎ君! なんで渚君が…」
リナリア、堂城の事を想い出していた樹利亜は、プレミアハンカチの登場に、コップを持っているのを忘れて渚に襲い掛かる。
「あぁこれですか? 本人に貰ったんです」
「えっえぇぇえええええええええええええええ」
「なになになない」
樹利亜の突然の叫ぶ声に周りにいた人が樹利亜の方を見る。
「あぁなんでもないです」
自分の声に振り向いた人に向かってなんでもないと叫ぶ。
そして改めて渚に向かって…今度は小さな声で、
「穎川泉とどういう関係なんですか?」
「樹利亜さん。ここだけの話でお願いします」
_ごくり 唾を飲み込む音_
「僕達、同じ高校の出身なんです。それで、いま探偵事務所で探偵をしている自分に調査依頼がきたんです。そして、その時、謝礼としてそのタオルを貰ったんです」
「そうだったんですか? あの? 穎川さんが捜して欲し…あぁごめんなさい。私ったらつい?」
探偵に依頼人の事を訊いてしまって謝ろうとした樹利亜の腕を引き寄せ、自分の胸に抱き寄せる。すると…
『…はぁ…龍治さん…はぁぁぁぁぁ…もう限界…』
『…嘘つき。本当は、もっと欲しいだろ? 泉?』
『…』
『その無言は、了承と受け取ってもいいのか?』
『…ちっ』
『…なに? よく聞こえない。ほら? 泉、なにか早く言わないと…』
『…わわわたたしをあなた色に染めて下さい』
『いい子だ!』
※ICレコーダーに、録音された音声を樹利亜の耳元で再生した。
★
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます