11話 売名行為

 本来であればコミュニケーションは、あまり特ではない方だ。

 しかし、チャンネルを成長させる為には、慣れないことをするしかない。


(私はマネージャーだからな)


 伸ばさないと地球が終わる可能性があるというのも、勿論ある。

 だが、どうせやるのであれば、伸ばしたいという思いもある。


「話しかけてこよう」

「お友達になるの!?」

「少し違うかも」


 色々調べたのだが、チャンネル登録者数を増やすのには、チャンネル登録者数が必要だということが分かった。


(チャンネル登録者が少ないチャンネルは、ダンチューブのAIがおススメしてくれず、埋もれてしまう。つまり! 多くの人の目にまり、チャンネル登録者を伸ばすのには、チャンネル登録者が必要だってこと!)


 このジレンマを解消するのには、有名な人に宣伝して貰うというのは有効だ。


「こ、こんにちは」


 スマホでの動画撮影が終わったのを確認すると、ミナは青髪ロングの少女に話しかける。


「こんにちはっす!」


(動画の雰囲気そのままだ!)


 笑顔で挨拶をする彼女。

 動画は声のみの出演だが、雰囲気はそのままであった。


「あの、もしかしてモンスターマニア、ガオさんですか?」

「ええ!? バレちゃったっすか!?」


 動画内でも解説の際に、このような口調をしていたが、まさか常にこのような喋り方なのだろうか?


「あはは」


 愛想笑い発動。


「実は、私の友達が最近ダンジョン配信を始めまして」

「ほうほう!」

「登録者3000人のガオさんは本当に努力されているのだと、憧れのようなものを感じました! その為、貴方の声を聞いた瞬間、ついつい体が勝手に動いていてしまいました! 気が付いた時にはもう、既に貴方に話しかけた後だったのです!」


 何を言っているのだろうか?

 とっさに、それっぽいことを口から放ってしまった。


「つまり……売名っすか?」


 明るい笑顔で、ガオはそう言った。


「え、あ、そうかも」

「正直っすね!」

「すみません。伸ばさないと、色々とマズいので……」

「ほう? 深くは聞きませんが、私から貴方のチャンネルを紹介してもいいっすよ!」

「え!? 本当ですか!?」

「ただし、条件があるっす!」


 条件として出されたのは、3つであった。


 1つ、チャンネルを明かすこと。


 2つ、友達になること


 3つ、フェニックスの撮影に協力すること


(3つ目はなんだろう)


 チャンネルを明かすのは、売名に必要なので勿論そのつもりだ。

 友達も、話をしてそこそこ盛り上がっている時点で、友達のようなものなので良いだろう。


 3つ目はなんだろうか?

 フェニックス……危険な匂いしかしないが。


 でも……


「いいですよ! こちらこそ、よろしくお願いいたします!」

かたいっすね! タメ口でいいっすよ! 私はこのノリが楽なんで、このノリで行くっすけど! それとええと、そちらの可愛らしい子は一体?」


 ガオはイルの方に目線を向けた。


「ダンジョン配信者のイルだよ! 夢はアイドルダンジョン配信者として有名になること!」

「ということは、先程言っていた友達というのは……」

「イルのことだよ!」

「そうっすか! よろしければ、イルちゃんとも友達になりたいっす!」

「いいよ! これで2人目の友達だ!」

「光栄っす!」



「それで、フェニックスの撮影について詳しく教えてくれるかな?」


「了解っす! フェニックスというのは文字通り、不死鳥であり、S級モンスターっす! 炎を使った攻撃を得意とし、多くの探索者が危ない目に合っているっす!

 しかし、一番厄介な所は死なない所っす!

 細胞が少しでも残っていれば、そこからあっと言う間に復活すると言われているっす!」


(え? イルじゃん、それ)


「そんなフェニックスを、本日撮影するんすけど、その……中々勇気が……」

「なるほど、そういうことね。でも、どうしてそんなに危ないことを?」

「今度、フェニックスの解説動画を出す予定なんすよ。今まではあまりにも危険なモンスターは、フリーイラストを使用していたんすけど、映像があった方が分かりやすいかなと思ったっす!」

「確かに映像があった方が、怖さとかも伝わりそうだしね」

「そうっす! 覚悟はできたっすか?」

「うん。撮影だけだよね?」

「当たり前っすよ!」


 こうして、フェニックスの撮影をすることになった。

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