10話 無名で登録者138人は凄い
《吉村ミナside》
凄いことが起きた。
朝目が覚めると、チャンネル登録者が138人だったのだ。
昨日の時点ではチャンネル登録者は8人だった。
配信を見に来た人が登録してくれたのだろう。
イルは無名の探索者だ。
何か他の活動をしていたという訳でもない。
それなのに、チャンネル登録者が5人増えただけでも凄い。
しかし、138人はその比ではない。
一体なぜ?
「もしかして……」
考えられるとすれば、ネットのどこかで話題になった可能性だ。
イルの名前で検索をするが、イルという名前が多過ぎるのか、ヒットしない。
「イル、起きて!」
「むにゃむにゃ……」
可愛くベッドの隣で寝ぼけている彼女を起こす。
「チャンネル登録者が増えたよ! 138人!」
「138人……? 1000人も行ってないないのかぁ……」
リアクションが薄かった。
イルはただ眠そうにあくびをすると、ベッドから降りるのであった。
(凄いことなんだけどね)
◇
ミナはダンチューブで、モンスターについて調べることにした。
パソコンの前に座る。
「また襲われてもいいように、勉強しておこう。復習は大事だからね」
「ヒュドラ」で検索を掛けると、モンスター解説チャンネルが出て来た。
動画をクリックする前に、投稿者のチャンネルページを開く。
「モンスターマニア、ガオか」
チャンネル主はモンスターマニアを自称しているようで、様々なモンスターについての解説が投稿されている。
声だけなので姿は分からないが、女性の声であった。
チャンネル登録者は3000人。
活動の方向性は違うものの、同じダンチューバーとして、悔しい思いはある。
「S級モンスターか」
コメントでリスナーが言っていた通りだ。
「普通の解毒ポーションじゃ、効果がない程の猛毒か」
イルはなぜ、解毒ができたのだろうか?
「イル、どうやって解毒したの?」
ベッドの上で漫画を読んでいるイルに、声を掛ける。
「細胞を修復させただけだよ!」
「なるほど」
さっぱり分からないが、さも当然のことのように言っているので、イルの種族にとっては普通のことなのだろう。
「イル、登録者増やしたい?」
「うん!」
「じゃあ、行こうか」
「どこに?」
「ダンジョンにだよ」
折角、伸び始めているのだ。
それに乗って行動しない手はない。
「この前のダンジョンに行こうか」
「うん! 絶対大人気アイドルダンジョン配信者になってみせるんだから!」
◇
昨日と同じく、少し距離のあるダンジョンへと向かった。
ダンジョン前まで来ると階段を降り、ダンジョンへと入る。
「よいしょ!」
イルがミナの体内から放出されると、スキル【擬態】を使い、人間の姿になる。
「どうにかして、ダンジョンの外でも人間の姿でいられないの?」
「ちょっと難しいかな……でも、別な方法でどうにかできるかも!」
「別な方法……?」
「うん! 後少し、こう……
「頑張れ」
ポケットに入っているスマホを取り出すと、配信の準備を開始する。
設定はしてあるので、確認をするだけで良い。
「あれ?」
配信をする為に、配信エリアを決める。
その為に、奥へと進んでいくのだが、そこで少女の姿が目に入った。
「知り合い?」
隣にいるイルが、可愛らしく首を傾げる。
「知り合いじゃないけど、知ってる人かも」
その少女はスマホを手に持ち、モンスターを撮影している。
撮影しているモンスターはスライムで、人間を襲わないタイプのようだ。
「モンスターマニア、ガオ?」
少女の動画撮影時の声を聴いた限り、おそらくガオだ。
「そうなの?」
「多分」
多くのノベルゲームをやっているミナは、人の声を聴き分ける能力が一般的よりも少し高い。
大人向けゲームは、声優の名義が違う場合があるので、それを調べていた時期があったからだ。
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