8話 vsヒュドラ

 コメント欄は皆、イルを心配している。


 目の前にいるのは、S級モンスターとされる、ヒュドラだ。


 そんなヒュドラに、初心者探索者であるイルが挑もうとしていれば、その反応もおかしくはない。


「イル! 武器も折れちゃったし、逃げようよ!」

「う~ん」


 イルは折れた剣を投げ捨てた。


・武器を捨てただと!?

・いくらなんでも、素手は無理だ!

・いや、もしかすると魔法でも使う気か?


 一体イルは何を考えているのだろうか?


・魔法が使えたとしても、逃げるべきだ!

・ヒュドラの毒を食らえば、1分も生きていられない!


「私、アイドル系探索者なんだよね!」

「イル……?」

「ごめん! 今からアイドルらしくない戦い方をするから、一回配信切るね!」


 イルに目で合図をされたので、リスナーに謝罪をすると、配信を切る。


「ミナは離れていて!」

「あ、うん」


 お言葉に甘え、かなり遠くへと避難する。

 コメント欄にあった毒も、ここまで来れば食らわないだろう。



《イルside》


 このモンスターは、食べたことのあるモンスターだ。

 コメントによると、どうやら【ヒュドラ】という名のモンスターらしい。


「変身!」


 魔法少女アニメの少女のように、少し格好つけてつぶやいた。

 スキル【擬態】を解除する。


 イルの姿は元通りのミミズの集合体のようなグロテスクな姿へと、変化を遂げた。


「やっぱり、この体じゃないと上手く動けないな!」


 ダンジョン内であれば、【擬態】で人間の姿になれる。

 だが、まだ使い慣れていないのか、やはり生まれ持った姿の方が強いのか、上手く戦闘ができない。


「さてと、いただきます!」

「ギョアアアアアアアアッ!」


 ヒュドラは9つの頭から、紫色の煙を吐き出す。

 これは毒らしい。


 だが……


「気にしない気にしない!」


 イルは触手を9本伸ばすと、それぞれの頭に勢いよく伸ばし、突き刺す。


「ギョアッ!?」


 ヒュドラは叫んだ。


「細胞破壊に1分はちょっと長いかな?」


 致命傷でなければ、大体0.1秒もあれば、状態異常も含めた完全回復が可能だ。

 そんなイルにとって、ヒュドラの毒は脅威ではない。


 イルは触手を勢いよく振り回し、ヒュドラの体を細かく切断した。

 そして、それら全てを体内に吸収する。




《吉村ミナside》


 前回、戦いを見ていたら気を失ってしまったが、今回はなんとか気を失わずに済んだ。

 サングラス越しなのと、直視せずにたまにチラリと見るくらいであれば、なんとか大丈夫なようだ。


 それにしても……


「あっという間に決着が付いた」


 ダンジョンに関しては詳しくないのだが、明らかに強そうなモンスターだというのは分かった。

 それに、コメント欄の情報が正しければ、S級モンスターだ。


 そんなモンスターを、あっという間に倒せるイルは、化物である。



 人間に【擬態】し直したイルを確認すると、再び配信を行った。


・ヒュドラがいない!?

・場所はさっきの場所だし、逃げた訳でもない……どうやって倒したの!?

・どんなスキルや魔法を使ったんだ!?


(視聴者の皆様、彼女はヒュドラ戦にて、スキルも魔法も使っていません)


 ミナは心の中で、優しくツッコミを入れた。


「秘密だよ! アイドルは秘密がいっぱいなのだ!」


・気になる

・マネージャーさんがやったんじゃね?

・だとしたら、マネージャーが化物

・さっきからそんなに時間掛かってないし、もしも本当に倒したのだとしたら、人間技じゃないな


「えへへ!」


 リスナーの皆から褒められ、イルは嬉しそうに笑うのであった。










【あとがき】

そろそろイルが可愛く見えてきましたかね?

見えてきた方は、ぜひフォローや評価など、よろしくお願いいたします!

(もうしてくださった方も、ありがとうございます!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る