ロリ美少女に擬態するグロテスク宇宙人、地球人抹殺の使命を放棄し、ダンジョン配信者になる~普通の女子中学生の私は、宇宙人のマネージャーに指名されました~

琴珠

第1話 宇宙人の女の子

 今から約20年前、世界のいたる所にダンジョンへと繋がる階段ができた。

 そして、現代ではその空間の様子を配信する、ダンジョン配信が流行している。



 両親は現在、海外旅行中だ。

 家にいるのは、中学生の女の子1人である。


 だが、それでもやることは変わらない。

 休日なので、いつも通り趣味のノベルゲームをプレイしていた。


「なんの音!?」


 足音ではないが、誰かが家の中に入り、こちらへと向かって来る気配を感じた。


 彼女、吉村よしむらミナは黒髪をポニーテールで束ねている、どこにでもいる女子中学生だ。

 そして、この家も特に何の変哲へんてつもない建物である。


「まさか泥棒!?」


 ごく普通の家庭ということもあり、まさか泥棒が来るとは思ってもいなかった。


 武器を構えたいが、今いる自室には、武器になりそうなものはない。

 あるにはあるが、それは日本刀を模したアニメの玩具である。


 そんなことを考えている内に。


 バンッ!


 勢い良くドアが開いた。


「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」


 普段あまり叫ばないミナであったが、叫ぶしかなかった。

 なぜならミナの目の入ったのは、赤黒い血のような色をした、ミミズの集合体のような生物だ。


 ダンジョン内のモンスターも配信や動画で見たことがあるが、やはり実際に目にすると違う。

 そして何より、今まで見たどのモンスターよりもグロテスクだ。


 ミナはその衝撃的過ぎる生物を見て、意識を失ってしまった。



「起きて!」

「はっ!」


 ミナは体を起こす。


「私、どうして寝てたんだろう?」

「寝てたって言うよりも、ビックリして気絶しちゃってたんじゃないの?」

「そうなのかな? ……え?」


 自室に、なぜかピンク髪ロングヘアの、小学生くらいの女の子がいた。

 顔は非常に整っており、美少女という奴だろう。


 ただ、ピンク色の髪の毛は少々派手かもしれない。

 服装は、なぜか同じ学校のブレザーの制服を着ている。


 ということは、中学生なのだろうか?


「そうだ! 泥棒が入って来たんだ! ……って、もしかして泥棒じゃなくて、君?」

「そうだよ! 泥棒じゃなくて、私だよ!」

「そ、そう。安心したけど、勝手に人の家に入っちゃ駄目だよ。というか、どうやって入ったの? 鍵かかってなかったっけ?」

「開けた!」

「開けた!?」

「簡単だったよ! 本当は壊すこともできたけど、壊すのは良くないと思ってさ!」

「え……」


 言っていることがよく分からない。

 と、ここでミナは気を失う前の記憶を取り戻した。


「う、うわあああああああああああああっ!」

「大丈夫?」

「あ……あ……君は化物!?」

「ヒドイな! 女の子だよ!」


 女の子は、「ぷんぷん」と可愛らしく頬を膨らませた。


「おかしいな……私のこと女の子に見えてない? ピンク色の髪の毛をしていて、小学生くらいの女の子に見えない?」

「み、見えるけどさ……」

「気を失う前の姿はあんまり思い出さない方がいいよ! 人間には刺激が強いからね!」

「や、やっぱり……君は化物なんだな!?」

「どう見たって女の子でしょ?」

「お、女の子に見せてるだけで、本当は、さっきの化物なんでしょ!?」


 震えながら、必死に言葉を絞り出した。


「凄い! どうして分かったの!?」

「そ、そういうゲームをやったことがある」

「なるほど! バレちゃ仕方ないね!」


 女の子は可愛らしく「ごほん」と咳ばらいをすると、自己紹介を始める。


「今の私は、君に見せている幻覚みたいなものだよ! 姿形は変わってないけど、君にだけ、私が女の子に見えるって感じかな!」

「そ、それって、他の物が変な風に見えたりってのはないよね?」

「ないよ!」

「よ、良かったぁ……」


 良くないかもしれない。

 モンスターが目の前にいるのだから。


 しかし、モンスターはダンジョンの外に出ることができないハズだ。

 そして、人間の言葉も喋れない。


 一体どうして、モンスターがここにいるのだろうか?


「じゃあ、気になっていそうなことを説明するね! まずは私の正体から!」

「ダンジョンのモンスターでしょ?」

「ぶっぷー! 違います!」

「違うの?」

「うん! 人間の言葉でいう所の、宇宙人かな!」

「宇宙人!?」

「うん! 地球の知的生命体、つまりは全人類を抹殺する為に、地球に送られて来たんだよ!」

「想像通り!?」


 思わず突っ込んでしまった。

 気絶前に見た外見と、その使命があまりにも一致し過ぎていたからだ。


「大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも……」

「大丈夫だよ! 別に私は人間を殺したりしないしさ!」

「そうなの?」

「確かに最初は私の遺伝子的に、人間を殺したくなったんだけどね。この世界のダンジョンっていう場所で暴れていたら、そういう気持ちも収まって来てさ!」

「そ、そう」

「今は人間と仲良くしたいと思ってるよ!」

「そうしてくれると助かるよ」

「えへへ!」


 嬉しそうに、ニコリと笑う彼女。

 どう見ても、可愛らしい小学生にしか見えない。


「でも、どうして私の所に来たの?」

「それが、やってみたいことができちゃって!」

「何をやりたいの?」

「ダンジョン配信って言うのをしてみたい! でも、私1人だと難しそうだから、人間のマネージャーが欲しいかなって思ってね!」

「ダンジョン配信!?」


 ダンジョン配信とは、文字通りダンジョンを探索する様子を配信するという、中々に危険なコンテンツのことである。


「他の人に頼んだ方がいいんじゃない?」

「どうして? 君は私のこと嫌い?」

「そうじゃないけどさ……」


 実際は好きになれという方が難しい。

 あの姿を思い出さないようにはしているが、忘れることはできない。


「だったらどうして?」

「ダンジョンに行きたくないからだよ」


 ダンジョン配信をすれば、モンスターとの戦闘は避けられない。

 かなり危険なことだ。

 今はエンタメとして受け入れられてはいるが、それでも危ないと言う認識を持っている人も珍しくはない。


「そっかぁ……でも、もしも私が他の人の家に行って、その人が私を殺そうとしたら私少し怒っちゃうかもしれないなぁ……」

「え?」


 と、ここで目の前の少女のお腹が鳴る。


「そういえばお腹空いたなぁ……」

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