第36話
11年前、俺は、俺は、英語教師になり為に白藤国際大学に入学した。
そこで、翻訳家を目指し、外国語学科に入学した瀬野明希と出会った。
そして、俺達は、学生寮で一緒の部屋だった事もありすぐに仲良くなり、学科こそ違ったがそれ以外は常に一緒にいた。
『やっぱりここのチキンカツサイドは最高!』
11年前、当時大学1年だった俺は、大学内のカフェ「chocolate:チョコレート」で、今は社員として働いている「rose」でのバイトの時間まで大好物のチキンカツサンドを食べながら時間を潰していた。
すると、慌てて様子で瀬野明希が自分の元にやってきた。
『薪、俺! 彼女できた!』
『はぁ…それはおめでとうさん。』
薪は、明希の告白に興味なそうにおめでとうさんと答えるとチキンカツサンドをまた食べ始めた。
『おい!』
『なに? 俺、チキンカツサンド食べてるんだけど?』
明希の待った発言に兼城は食べる手を止め、嫌そうに彼の方を見る。
『おい! もっと他に言う事ないのかよ! 親友に彼女ができたんだぞ』
『それはおめでとうさん! で? 今度はどの子取り巻きの事つき合う事になったんだ?』
瀬野明希は、モテる。
そして彼の周りにはいつも女子がいる。それも毎回違う女性が。
だから、今回もその取り巻きの一人とつき合う事になったんだと思い、あんまり興味を示していなかったら……
『ふざけるな! 俺に取り巻きなんていない!』
大きな声で叫びながらコンクリートのテーブルを叩く。
その衝撃でテーブルが揺れ、上に置いていたお皿が床に落ち…る寸前でどうにか受け止める。
『おい! なにやってんだよ! 割れたらどうするんだよ!』
『…ごめんでも…』
『でも…?』
『いやぁ…俺が悪かったです』
なにか言いたげそうだったが最終的には自分が悪いかったと謝った明希に、兼城も…
『まぁ? さっきのは俺も言いすぎた』
『…薪』
『でもだからって、物に当たっていいわけじゃあないだからなぁ? そうじゃあなくても俺達…注目の的だぞ!』
『!』
いま、二人がいるのは外のテラス席だが、テラス席の様子は室内から丸見え。会話こそ中には聞こえないが…。
なので…
『お客様! 何かありましたか?』
騒動を聞きつけて女性のスタッフが心配そうに二人の元にやってきた。
『ぁぁぁいや』
明希は、突然の店員に何も言えない。
『店員さん! すみません! お騒がせして! でも、丁度よかった! 明希!』
兼城は突然明希の腕を掴み、店員に怪我をしている部分(左の手のひら)を店員に見せる。
血は出ていないが熱を帯びて少し炎症を起こしてくる。
そして、念押しするように…こう付け加えた。
『こいつ好きな人に振られた方ってコンクリートのテーブルに八つ当たりしたんですよ! でも、それで怪我したら元も子もないですよね? 店員さんもそう思いませんか?』
『…そうですね?』
困惑しながらも「そうですねと?」営業スマイルで返事を返す。
『ほら? 店員さんだっても言ってるだろう! だから明希! 失恋のショックは解るけど物に当たるなぁ! いいなぁ!』
『…うん』
『解ってくれたらならいい。店員さんそれで申し訳ないんですけど、氷を少し別けて貰ってもいいでしょうか?』
『大丈夫ですよ! すぐにお持ちしますねぇ?』
『ありがとうございます』
兼城は、店員に頭を下げ、一方の店員も二人に頭を下げ氷を取りに行く為に二人の元を離れていった。
『…ごめん』
店員が離れた瞬間、明希が兼城に向かって謝ってきた。
『…貸し……いやぁ彼女に会わせろ!』
明希がそこまで言うのなら、大層可愛い彼女なのだろう? だったら、それを今回の貸しの代わりにしよう。
『…おう! じゃあ、彼女が待ってるから! もう行くねぇ!』
☆
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