第30話

12月11日 7時10分。 葵行きのバス車内。

 ※左側のうしろから3列目の窓側の席に座った。バス内には、男女合わせて20人ぐらいの乗客が乗っている。

 それに、殆んどの乗車がスマホで音楽聴いたり、寝てたりと自分の世界に入り込んでいるせいか、車内は比較的静か。

 あと、50人乗りのバスに20人しか乗って居なので來未も隣を気にすることなく二人席に座る事ができた。

(それにしても…葵に行く事になるなんてねぇ? これはもう運命のいたずらかな?)

 高速バス乗り場の案内所で一番最初にくるバスが葵だった。

(けど、知らない所に行くよりかは理由はともかく多少は知ってるところに行く方が色々便利かも? まぁ…複雑だけど)

 來未は、窓の外に見えてきた懐かしい葵の風景に複雑な感情を抱きながらも、新しい新生活に胸を躍らせる。

 10分後、終点の葵のバス停に到着。

 運転手の到着の声に來未は、立ち上がりバックの中スマホを取り出そうとしたら、樹からさっきの返事が届いていた。

 バスに乗った瞬間、無料通話アプリ「オレンジ」を開き、連絡先から「rose」のグループをグループごと削除した。

 但し、樹の連絡先はもしかしたらさっきの退職願いの返事いやぁ抗議のメールが確実にくると思い彼の連絡先だけは消さずに残しておいた。

『…七橋、お俺達に何も言わずに辞めるなんて絶対許さないぞ。それもこんな形で一方的に辞めるなんて絶対許さないからなぁ! それに、辞める理由が俺俺達いやぁお客様にこれ以上迷惑を掛けられないからってふざけるなぁ! 俺達はお前に何も相談して貰えなかったこっちの方が辞めるって言われるよりか悲しんだよ! 七橋俺達は仲間じゃあないのかよ!』

(…そうですねぇ? でも、ごめんなさい。私はもう…)

 皆とは一緒に居られないんです。いちゃいけないんです。

 さよなら…私の楽しかった第2の青春。

 さよなら…わたしの「rose」

 來未は樹からのメールを閉じ、オレンジから彼の連絡先を消去した。

 そして、そのままスマホを手に、運転手の所まで行くと運賃の精算機にスマホのICカード部分をタッチしてバスを降りた。

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