第25話

「…バカ野郎」

 來未からのメールを読み終えた樹は、机の両端は力一杯叩く。

 その衝撃で机の上に置いていたシフト表などの書類が床に落ちる。

 しかし、樹は気にせずさらに叫び続ける。

「なんでそうやってお…如月? どうした?」

 事務所のドアの隙間からこちらを見つめている如月と目があった。

「…いま、お時間大丈夫ですか?」

「あぁちょっと待ってくれ!」

 樹は、如月にそう告げると落としてしまった書類を急いで拾い上げ、机に戻す。

 そして、來未からのメールも閉じると…扉の外で待たせている如月に向かって…

「入っていいぞ!」

「失礼します」

 樹のその言葉に、如月が扉を開け、事務所の中に入ってきた。

 そして、樹の元にやってくるなり…自分の前で土下座を始めた。

「店長、昨日は本当にすみませんでした。どんな罰では受けるつもりです」

「如月! ちょっと待て! おまえはなにか誤解をしてる。それに、お前に土下座をして貰う理由がない」

「いえ! あります。自分は、昨日ミスを犯しました」

 樹の誤解だという発言にも、如月は誤解ではないと土下座をやめない。

 そんな如月の態度に樹は、「はぁ」と小さくため息をつく。

「あのなぁ如月。確かにお前は昨日ミスを犯した。けど、そのあとお前はそのミスを挽回するかのようにキッチンの仕事を頑張っただろう? それに、お前は同じミスを二度しない? そうだろ?」

「…店長?」

 如月がゆっくり顔を上げる。

「だったら、こんな所にいないで早く仕事に戻れ! そして、今日も美味しい料理を作ってくれ!」

「はい!」

 樹の励ましに、土下座をしていた如月がゆっくろ立ち上がり、自分に対して一礼する。

 そして、事務所から出ていこうとした瞬間…

「あぁ忘れた! 店長! 神林先輩から内線1番お電話です」

「それを早く言え!」

「ごめんなさい!」

 樹の言葉に如月に深々と頭を下げ、樹は、栞の電話に出る為に事務所のある電話の受話器を取り内線1番のボタンを押した。

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