別れ

第23話

12月11日 7時 rose キッチン

「あの? 兼城先輩?」

 テーブルの上で唐揚げ用の鶏肉を包丁で切っていた兼城は、うしろから聴こえてきた如月の声に作業を止めうしろ振り返る。

「どうした?」

「17時からの予約客って結局何人来るんですか」

「20人」

「そんなにくるんですか! ってかそんなにくるのに今日キッチン2人で大丈夫なんですか?」

 店長から、団体予約の事は事前に訊いてはいたが人数までは訊いてはいなかった。

 なので、兼城先輩から20人と言われ思わず叫んでしまった。

「大丈夫な訳ないだろう! だからこうして営業時間前に仕込みをしてるだろう? おまえもしゃべってる暇があるなら手を動かせ!」

 兼城は如月にそう告げると、再び唐揚げ作業に戻ってしまった。

 ☆

「…兼城先輩もあんなに怒らなくてもいいのに…けど、自分も作業に…って」

 如月が自分の担当である、サンドイッチの仕込みに戻ろうとしたら…キッチンの壁に立て掛けてある電話に電話が掛かってきた。

※電話は、事務所、キッチンに1台ずつある。

「悪い如月! ちょっと出てくれ!」

「解りました」

 手の離さない兼城の代わりに如月が電話に出る。

「お電話ありがとうございます カフェroseです。あぁ神林先輩! おはようございます」

 電話は、まさかの神林先輩からだった。

 如月は、突然の栞からの電話に驚きながらも、用件を尋ねる。

『その声は、如月?』

「あぁはい!」

 如月は、栞からの問いかけに一言「はい」と返事を返す。

『店長? いる?』

「店長ですか? ちょっと待って下さいねぇ? いま確認してきますから」

『うん』

 如月は、栞からの電話を一度保留扱いにして、店長を呼びに事務所に向かった。

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