第17話

「ご馳走様でした。今日は、急にお邪魔してすみませんでした」

「僕の事なら気にしないで! それに、栞から話は訊いてるから、遠慮しないで何日でもゆっくりしていっていいからねぇ?」

 夕飯を食べ終わった來未は、匠に改めて、お礼といきなり尋ねてきた事を詫びた。

「ありがとうございます。でも、泊めて貰うのは今日だけで大丈夫です」

「僕の事なら遠慮しないくていいよ! 部屋なら余ってるから」

 匠は、自分が原因なら、全く気にする必要なんてないと來未に告げる。

 しかし、來未は、そんな匠からの申し出を断った。

「…違うんです。この街には…あれ? ゴミでも入ったかな?」

 言葉を急に切り上げ左目を手でこする

「!」

 來未の目元に流れる涙に気づいた匠。

 しかし、肝心の來未自身は、それをゴミだと思っているので、まさかそれが涙だとは気づいていない。

「すみません! 話の途中で!」

「うん気にしないで。でも、本当に僕らのことなら気にしなくていいよ!」

「そうだよ來未! 私達と一緒に暮らそう!」

「ありがとう栞。でも、泊めて貰うのは今日だけでいい。勿論、二人の事が嫌いだからじゃあないよ! ただ、このまま二人に甘えたら私の方がダメになちゃうと思う。だから、二人に頼らないで一人で頑張ってみたいの。それに…私が居たら二人イチャイチャできないでしょ?」

「…來未」

 來未からの爆弾発言に栞の顔が赤くなる。

「だから、邪魔者は早々に出て行くよ! 二人の甘い新婚生活じゃましたくないしねぇ?」

「…解った。來未がそこまで言うなら私は、もう何も言わない。でも、新居が決まるまでは私の家にいてねぇ?」

「解った」

 ★

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る