cooperator 協力者
第24話
「…木を隠すなら森の中…裏切り者を隠すなら犯罪者の中って…あの人らしいって言えばあの人らしいけど本当にやるか普通?」
※意味:物を隠すのではあれば似たものの中に紛れ込ませるべき。
翔吾のメールに一緒に添付されていた写真にある人物を零は、一方的に演技を朧を悪者にして再開し、彼の元を離れた。
イルカ広場を離れ、屋上にやってきた零は、自分のスマホを取り出し、ある人物に電話を掛けた。
すると、電話の相手は、ワンコールで出た。
{……はいもしもし}
電話の相手は、寝起きなのかどこか機嫌が悪い。
「○○さん。一夜です。いまお時間大丈夫ですか?」
零は、電話の○○に向かって名前を名乗り、いま、電話可能か尋ねる。
{時間なら大丈夫だけど、どうしたこんな朝早くに?}
電話口の○○は、大丈夫と言いながらもあきらかにめんどくさそうだ。
なので、自分の話に興味を持ってもらうために、あえて強めの口調で言葉を返す。
「こんな朝早くって○○さん? もうお昼ですよ! もしかしてまた遅くまで飲んでたんですか? 死にますよ? あぁ! もう死んでましたね?」
{おい! 勝手に殺すなぁ!}
「えっ? 死んだんじゃあ……あぁ! すみません。生きてましたね? ○○さん! 生きてるのか死んでるのか、解らない様な生活してますからねぇ?」
{してねぇよ! まぁいい…それよりお前学校は?}
電話の相手の○○は、零の表の正体を知っている。
基本的にblackBart 以外の人間に自らの表の姿を教えてはいけない。
それどころか、ばれた場合はその時点でその相手を殺さなければいけない
なので、○○は、blackBart 以外の人間で零の本来の姿を知る数少ない人間であると同時に、表の本来の姿を知っても殺される事のない特別な人間であると言う事だ。
「抜け出してきました」
{はぁ? 抜け出してきた?}
「はい! 授業中に突然相棒から急に仕事が入ったからって呼び出しを食らって、いま絶賛仕事中なんです。まぁ? そんな事は置いといて、○○さん。貴方にお聞きしたい事があるんです」
○○は、電話口の零の言葉に首を傾げる。
零が所属している blackBart には凄腕情報屋がいる。
だから…今回も俺じゃあなくてそいつに訊けばいいのでは?
{あのさ…こんなことプロの探偵のお前なんかに言いたくないけど、素人それもただの会社員に訊く事なんかあるか?}
「○○さん。冗談がきついですよ! 貴方が素人? 笑わせないで下さいよ? どこの世界に…を仕事にしているただの会社員がいるんですか?」
{いいいいるかもしれないだろう!}
「いませんよ! それにどこの世界に…が自分の職業だと名乗る会社員がいるんですか? いるならぜひとも紹介して貰いたいですよ? うちの探偵事務所この頃人手不足なので…」
零は、○○からある人物の情報を得る為に、あえて彼を挑発する。
{……負けたよ}
「ありがとうございます」
{はぁ……相変わらずお前って悪魔だよね? で? 今回は誰のことを調べてるんだ」
○○は諦めて話を元に戻す。
人材派遣会社「紅」は、普通の派遣会社だか、社員の中に裏社会を追われた人間、もしくは裏社会の人間と裏で個人的につながっている社員が複数人働いている。
それどころか、人材派遣会社「紅」の社長は、元裏社会の人間だ。
勿論、紅で働いている普通の社員はこのことは全く知らない。
「言ってもいいですか?」
{ここまできてまさか言わないつもりか? ふざけるな!}
○○は、自分を脅し、情報を聞き出そうとしてきたくせに、「言っていいですか?」と自分に告げてきた零の態度に、正直怒りが込み上げてくる。
「ふふっ」
{なんだよ?}
「いやぁ? ○○さんって、時々、可愛いですねよ?」
{ふざけるなら切るぞ!}
もうついていけない! そう思い、電話をこっちから切ろうとしたら……
「冗談ですよ! 全く、○○さんって、冗談が通じませんよね?」
{お前だけには言われたくない! これ以上言うなら、例えお前が相手でも切るぞ!」
2回目の脅し。
「…今、○○さんの所で働いている、skyさんの昔の知り合いと仕事をしているです」
{!}
電話越しから飛び出した「sky」は、天童穂積の仕事上のコードネームだ。
それどころか、天童穂積が「紅」働いていることにも知っている。
まぁ? あいつならあり得るか?
そう自分に言い聞かせて、○○は、こっちに主導権が行くように会話を続ける
{おい! お前がこっちの事情について詳しいのは、まぁ……聞かなかったことにしてやる。ただ、その知り合いに、穂積を会せる訳にはいかない。例え相手がお前でも}
そう、例え、相手が一夜零お前でも。
「…そうですか? 解りました」
あっけなく引き下がった零に、○○は違和感を覚える。
いつもの零なら、こっちが折れるまで絶対引き下がれないのに。
おかしい。
{……なにをするつもりだ}
「なにもしませんよ! 正直、今回の仕事はやりたくないですよ?」
{やりたくない?}
「だってそうでしょ? どうせすぐに復讐されるのに、自ら殺されに行くとかもったいないですよ? 2年前に死に損なた五条龍也じゃあるまいし」
{……}
零の言葉に○○は、無言になる。
零、お前どこまで知ってる?
電話越しの零の悪魔の囁きに、○○は恐怖を覚え始める。
「○○さんなら知ってますよね? 五条龍也って男?」
{…}
知ってるどころか、天童穂積と同様「紅」で社員として働いている。
但し、正社員の穂積とは違い、訳あり社員として。
「俺の相棒、その五条龍也って人に2年前恋人だった春村瑞穂を射殺されたんですよ? だからか、框翔吾の付いた嘘を全部信じてしまったんです。バカですよね? 虐めてたのは、框翔吾の方なのに?」
零の口から飛び出した五条龍也という名前に○○は言葉を失う。
「○○さん。大丈夫ですか?」
{…お前、なんでそれを?}
この言葉が限界だった。
「…こう見えて探偵なので。それに……相棒なので」
{…相棒か?}
「えぇ! 仕事上の相棒ですけど?」
{じゃあその相棒は知っているのか?}
「なにをですか?」
{お前が今回の仕事に乗り気じゃあない事?」
「知りませんよ。まぁ? 今回の仕事に五条龍也が関わっている事は、教えますけど? そのあと、あいつがどうするかは知りませんけど?」
○○は、蜩朧の事情も零から訊いている。
だから、今回、五条龍也の事を知ったらをきっと蜩朧は……
「まぁ? 蜩朧には、復讐は無理でしょうね? 未だに死んだ恋人の事を忘れらない人間には」
零には、霊感がある。
なので、蜩朧のことが心配で2年もの間ずっと成仏できずに現世を留まっている春村瑞穂の事を零にはずっと見えている。
しかし、恋人だった、あいつに彼女の姿は見えていない。
それどころか、彼女の最後の願いも忘れて、復讐とか馬鹿げたことに時間を使おうとしている。
{そこまで言わなくていいだろう? 蜩も一応、裏社会の人間だろう?}
「違います。あいつは……蜩朧は、自分、いやぁ? 俺たちとは住む世界が違います。俺たちとは、生きている次元が違います。だから、迷惑なんです。復讐とか個人的な感情だけでこっちの世界に足を踏み入れられても迷惑なだけです」
そう…あいつとは生きている世界が違う。
{零…お前そこまで蜩朧の事を…解った。五条龍也は、俺が代わりに処分する}
「……ありがとうございます。あぁそうだ!」
{どうした?}
○○は、どうした? と零に尋ねる。
「…そう言えば Maria さんは元気にしてますか?」
{!}
Maria は 逸見ゆかり の仕事上のコードネーム。
名前の事を知っているのは、紅でもごく一部の人間だけ。
ゆかりが社員として働いているホワイトアリスの従業員すら、逸見さん。もしくはゆかりとしか呼ばない。
それを…なぜ?
{○○さん! 大丈夫ですか?}
{…あぁ。おい! 零!}
{なんでしょう?}
{なんでお前が、ゆかりのコードネームまで知ってる? 誰に聞いた?}
{えっ? ●●さんですけど}
{…}
●●さんと言う名前に、○○は言葉を失うどころか、それ以上何も言えなくなってしまう。
それどこか、今更ながら零の人脈の多さに驚く。
{お前、なんて奴と知り合いなんだよ! よりもよって、もと××と知り合いとか}
裏社会の人間でもない、自分でもできるなら関わりたくない人間。
{そうですか? 可愛い人ですよ? なんなら紹介しましょうか?}
{遠慮しとくよ? まだ死にたくないし}
{そうですか? まぁ? ○○さんがそこまで言うなら}
{零?}
{なんですか?}
{お前は……どう……いやぁ? じゃあ、処理が済んだら連絡する}
{はい! 連絡お待ちしております。○○さん。愛しています}
{…}
悪魔だ! いやぁ死神だ。
○○は今日こそ、零と友人になった事を恨んだ日はなかった。
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