第17話

『朧、あいつだ。真正面の席に座ってる黒いスーツの男』

 イルカを見るようにスーツの男を指差す。朧も彼の視線を追うようにその男を目に焼き付ける。

『本当にあいつなのか?』

『あぁ。右耳に目印の黒い鳥のイヤリングが見える。そして、同じ物が事務所にあった』

 写真を撮る仕草で、朧に証拠の画像を見せる。そこには、確かに真正面にいるスーツの男が耳に着けている黒い鳥のイヤリングが写っていた。

『お前、こんな写真いつ撮ったんだよ』

『報告書を渡しに行ったとき』

『はぁ? お前勝手に撮ったのか?』

『馬鹿か。ちゃんと写真見ろ』

 零に言われ写真をもう一度よく見て見ると、隣に小さく社長の姿が写りこんでいた。

『社長! でもなんで?』

『撮るのは構わないけど撮るなら俺も一緒に写してってって言われたんだよ。』

『ふーん。社長ってそんな趣味があったあったんだ。まぁ? おかげで依頼人が確認できたからいいっか?』

 朧の言葉に、零はため息交じりに言葉を履く。

『なんか、社長に躍らせれた気分』

『考えすぎ。それよりこれからどうする? 最初から二人一緒に行く? それとも…』

 確認するように零を見つめる。

『…朧。お前、やっぱり馬鹿してるだろ?』

『確認しただけだよ! 頑張ってね玲子ちゃん?』

『そういう所がバカにしてんだよ。じゃあいってくる! 朧、俺が合図するまで…』

『解ってるって!』

 框翔吾の元へ一人駆け出していく零を手を振りながら見送る朧。

 ☆

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