第6話

10月1日 金曜日 9時30分 鈴凜学園高等部2年A組。

『零、お前いまどこにいる?」

『学校に決まってんだろ!』

 一夜零は、数学の授業中に突然インカムに聞こえてきた蜩朧の声に、呆れながらも返事を返す。

 零は、BLACK BIRDの一員である前に、普通の高校生でもある。

 だから仕事が無い時は、普通に高校生活を送っている。

 インカムは、特殊なやつを使用しているのでばれる事はない。

 そして、最大の特徴は、インカム越しの会話が他人に聴こえない。

『…仕事だ』

 普段自分が学校に居る時には、絶対連絡をしてこない朧が自分に連絡をしてきた。

 それだけに、今回の仕事がいつも以上に大変である事を察した。

『解った。すぐに行く集合場所は?』

『もう向かってる』

『!』

 零が窓の外を見ると、見覚えのあるスーツ姿の男性がこちらに向かって歩いて来ていた。 

(げっ!)

 零は、こっちに向かって歩いてきている朧を目で確認する確認する。

(まじかよ!)

 零の席は窓側の一番後ろ。

 そして、隣の席には保健委員の春野華が座っている。

 だから、案の定心配そうに自分に声を掛けてきた。

「一夜君? 大丈夫?」

「急にお腹が…うんんんん」

 大丈夫と聞いてきた春野に腹痛が本当だと言うことをさらに信じ込ませる為に机に顔から倒れ込む。

「一夜君!」

 春野の声に、黒板にチョックで問題を書いていた梅津が書く手を止めてこっちを振り向く。

「春野どうした?」

 春野の切羽詰まった声に、何かあったのかと尋ねる。

「先生、一…」

 春野の声を遮るように、零が机から顔を上げ…

「…梅津先生。保健室行ってきていいですか?」

「一夜! どうしたその顔?」

 零の真っ青な顔と梅津は驚く。

 仕事でたくさん演技をしているので、こんなのは朝飯前。

 今回はもしかしたら長時間になるかもしれないので、長時間姿を決しても怪しまれないように腹痛と念のために頭痛もプラスした。

 だか、梅津はそんな零のお願いに…まさかの答えを返した。

「一夜! 保健室に行くよりか自分の部屋で休んでこい! おい! 音風!」

「あぁはい!」

 梅津の声に、零の斜め前の席で、問題を書き写していた幸也は慌てて返事を返す。

「音風。一夜の事、寮の部屋まで連れて行ってやれ!」

 返事を返し、立ち上がると零の席までやってきた。

「解りました」

 そして、そのまま零と彼のバックを手に持つと教室から二人で外に出ていった。

 ☆

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