第34話

偶然の出会いから半年。俺は、ある一大決心をした。

 瑞穂とは、同じクラスだった。

 それからは、時々、彼女のおすすめの本を紹介して貰ったり、ホドギスのサクラシリーズについて話したりするようになった。

 自分も、元々サクラシリーズは、ファンじゃぁないけど、書店で帯とあらすじを読んで面白そうだと思い、読み始めたので彼女との語り合いは楽しかった。

 けれど、休日に二人で会う事はなかった。

 だから、俺は、彼女の十六歳の誕生日である九月二十六に瑞穂に告白することにした。

 俺は、前日覚悟を決めて彼女にメールを送った。

 

 TO  春村瑞穂

 題名 誘い 

 瑞穂さん。明日、暇ですか?

 もしよかったら、一緒に映画観に行きませんか?

 友達から映画のチケット貰ったので。


 ドキドキしながら瑞穂からの返信を待っていると返事はすぐ返ってきた。

 

 from 蜩朧

 題名 誘い

 朧君。こんばんわ。

 映画、朧君と? いいよ。

 明日、友達全員何故か用事があるみたいで。

 何時にどこに行けばいい?


 (まさか瑞穂さんの友達俺が彼女の事気になってるって気づいてる?)

 

 TO 春村瑞穂

 題名 誘い 

 十時に向日葵公園に

 きてください。

 

 集合場所を打ったメールを返したら、瑞穂から確認と言う返事が返ってきた


from 蜩朧

題名 確認?

あのね朧くん? 向日葵公園ってどこにあるの?

間違えてたらごめんね。

もしかして、前に朧くんが見せてくれた向日葵でできた絨毯。この写真を撮った場所が向日葵公園?


 朧は、瑞穂からの返信を見て、やっと自分のミスに気付いた。

 向日葵公園は、朧の地元にある公園。それも、朧の実家から徒歩10分の所にある。

 だから、朧も小学生の頃は、土日になると、友人数人とサッカー、野球をしに毎週のように遊びに行っていた。

 中学生になってからは、時々友人数人と遊んでだり、愚痴を言いあったりしていた。

 でも、ある事件がきっかけで友人との間に大きな溝ができ、それっきり向日葵公園で遊ぶことがなかった。溝ができた友人はそのあと、自分の前から姿を消した。

 to  春村瑞穂

 題名 謝罪と訂正

 瑞穂さんごめんなさい。

 向日葵公園は、自分の地元にある公園でした。ごめん(泣)

 瑞穂さんに指摘されるまで気づかなかった……

 だから、もう一度、改めて、集合場所お知らせ。

 二隻駅内にあるカフェテリア 時間は十時。


 謝罪と新しい集合場所を打ったメールを瑞穂に送った。

 けれど、朧の心は、さっきの失敗をまだ引きずっていた。

(なんで、あんな初歩的なミスを犯してしまったんだろう。瑞穂さんに見せたのは、公園の周りに咲いてる向日葵でできた黄色絨毯の写真。……あぁ、忘れようとしたのにまた思い出しちゃった。あの日の事。折角忘れる為に地元を離れたのに)

 メールを打ち終わった朧の前に、無造作に置かれた映画のペアチケット。

 チケットに書かれた映画のタイトルは「悲恋」

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