自分らしく

「2年掛ったけど、ようやく渡せたよ?」

『……そっか?』

 凜から出てきた恭弥は、自分のことを心配して電話を掛けてきた針谷智樹に、ちゃんと手紙を渡すことができたと報告した。

「……智樹?」

『ん?』

「これでよかったんだよなぁ? あの子……幸也くんに、あいつからの手紙渡して?」

『恭弥?』

「……本当なら、幸也くんに、俺は、2年前に、あの手紙を渡せないといけないかった。でも……」

 この2年間ずっと、心のどこかで、あいつを死ねせてしまったことをずっと後悔してた。

 もしかしたら……あいつを助けることができたんじゃないのか?

 もしかしたら……あいつを失わずにすんじゃあないのか?

 恭弥は、ふと右手の薬指を見る。

 そこには、2年前、城谷由梨と言う看護師の女性から、受け取った零からの最後の最後プレゼントであるシルバーの指輪が嵌められている。

『……別に、それは気にしなくてもいいんじゃあない?』

「えっ?」

 智樹からの意外な言葉に、恭弥は思わず「えっ?」と返事を返す。

「だって、あいつからの最後の手紙にも書いてあったんだろう? お前が、あいつの死を受け入れ、再び前を向き始めれでいいからって」

「……それはそうだけど」

 確かに、零からの手紙(遺言書)にもそう書いてあった。

 だけど……

『だったら、恭弥。お前が、そこまで悩む必要ないんじゃあないんのか? 確かに、幸也くん……だっけ? あの子の中では、この2年間。零は、まだ生き続けていたのかもしえない。けど、恭弥? お前は違うだろう? 勿論、俺だって、未だにあいつの死を完全には受け入れてないし、なんなら俺だのけ者だったし』

 途中まで良いことを言っていたはずなのに、最後の言葉で台無し。

「……ふふふ」

『なんだよ!』

「……なにも? 智樹? 明日? 久しぶりに墓参り行かねぇ?」

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