第5話

{……零! ついたぞ!}

 零が住んでいるマンションに着いた恭弥と智樹は、マンションの中に入る為に、零の部屋(305号室)に電話を掛ける。 

「あ……ぁ! いま開け……る! ちょっと待って……て!」

 恭弥の電話に出た零は、起きたばっかりだったのか、言葉の端端にあくび声が混ざっていた。

 そして、零からの電話が切れて数秒後、マンションの扉が開き、恭弥と智樹は、マンションの中に入って行った。

 2ヶ月前、零は、元相棒だった蜩朧の復讐代行で、元killer こと五条龍也を銃殺し、そして、2代目、judge(審判)海月梓こと黒鳥恭輔によって一時的に死の境を彷徨った。

 しかし、この事が世の中に公表させることがなかった。

「ごめん! 昨日も夜遅くまで仕事だったから! ぁぁぁ」

 2人をリビングに招き入れた零は、大きなあくびをしながら、散らかったテーブルを片付けながら二人に詫びを入れる。

「仕事?」

 智樹が、零の「仕事」と言う単語に不思議そうに首を傾げる。

「あぁ! ちょっと張り込みの仕事で……あぁ。あぁ! ゴメン! ちょっと顔洗ってくれるねぇ?」 

「あぁ!」

 そう言って、二人を残してリビングから出て行こうとしたが、なにかを思い出したのか、急に智樹の名前を呼ぶ。

「あぁそうだ! 智樹!」

「ん?」

 急に自分の名前を呼ばれた智樹は、なにを言われるのか解らず、無言で零の顔を見る。

「智樹。今日は、来てくれてありがとう!」

「……」

「じゃあ? 二人ともちょっと行ってくるねぇ?」

 そう言って、今度こそリビングからいなくなる零。

「……いまのは反則だろう? って? 大丈夫か智樹?」

 両手で自分の目を隠す智樹に、大丈夫かと声を掛ける。

「あぁ! なぁ? 恭弥?」

「んん?」 

「俺さぁ? 9年ぶりにあいつに会うのが本当は怖かった。けど、今日、零に会ってよかった。だから、恭弥? お前も本当のこと教えてくれ」

「本当のことって?」 

「今日、俺をここに誘ったのは、零とその恋人と鍋パーティをする為じゃなくて、俺に、何か話したいことがあるからだろう?」

 さっきの零の態度と話しから見て、今から自分達と楽しい鍋パーティをする感じには見えなかった。

 むしろ……

「……あぁぁ! 最後までお前のこと騙せると思ったのになぁ?」

 悔しそうに降参のポーズを取る恭弥。

「恭弥!」

 あっさり自分の行為を認めた恭弥に驚く智樹。

 しかし、その恭弥からは、予想もしていない言葉が返ってきた。

「それしても、俺たちも変わったよなぁ? この9年間で」

「そうだなぁ? まさか、理由はともかく零と9年も会わないとは思わなかったし、それに……」

 そこで、一旦言葉を切り、恭弥の方を見る。

「まさか、零が、こんないいマンションで、一人暮らししてるとは思わなかった。零って、高校の寮に入ってるじゃあないのか?」

 恭弥と智樹は、定期的に連絡を取りあってる。

 その為、零が鈴蘭学園に編入し、学園の寮に入寮したことも知っている。

「それは……」

「俺、もう学校行ってないし! なんなら、あの学園じゃあ、俺、もう死んだことになってるし」

「「!」」

 零はあの事件あと、ほとぼりが冷めるまで、約1ヵ月姿を消し、鈴蘭学園に、自らの死亡通知書と退学届けを送り、身元保証人になってくれた雨宮煉には、これまでの感謝の気持ちの200万と貴方の罪(着服及び学歴偽装)を弁護士会と警察には通報しないという誓約書を送り付け、あらたに城谷純也と裏警察である柳那央が裏の身元保証人になり、柳の息が掛かったオートロックマンションで一人暮らしをしている(一ヶ月の家賃は、光熱費諸々を入れて5万)

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