第60話
「上野さん、俺のこと好きだよね?」
あたしを抱き締めたまま、あたしの顔を覗きこむ廣田くん。
あたしは頷く。
「俺も好きだよ、陽緋のこと。」
“陽緋”
名前を呼ばれただけで、あたしのドキドキは止まらなくなる。
あたしは顔を廣田くんの方に向かされ、キスされる。
深まるキスに合わせるように、身体も廣田くんの方を向かされて。
やがて廣田くんの舌が、あたしの舌に絡んできて、あたしは廣田くんの服にしがみつく。
1度唇が離れたと思ったら、
「今日はここまでね、送るよ。」
廣田くんはにっこり笑った。
あたしの心臓も、呼吸もいつもの倍の速さな気がするのに、廣田くんはいつもの涼やかな顔で、なんだか悔しい。
またあたしだけ乱されて、余裕がなくて。
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