第53話

放課後。


「上野さん、一緒に帰ろう。」


帰り支度を始めたあたしに、廣田くんが声を掛けてきた。


「あっ、うん。

すぐ支度するから。

あっ。」


緊張して、焦って、ペンケースの中身を床にぶちまけてしまった。


あたしはすぐにしゃがみこみ、中身を拾い集める。


赤ペンを拾おうとしたら、廣田くんの指と触れあって。


「あ、ごめっ」


顔を上げるとすぐそこに、それこそ、キスできるんじゃないかってくらい近くに、廣田くんの顔。


「あ…」


拾いかけた赤ペンを取り落とす。


「はい。これで全部かな?」


廣田くんはペンケースに、拾ったものを入れてくれた。

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