第30話

ブーンブーン。


携帯のバイブ音が鳴る。


「あ、俺だ。」


鞄からスマホを取り出した隆太先輩が電話に出る。


「はい。翼?」


廣田くん?


「うん、うん。は?兎に角、お前んち行くわ。

面倒だから、亜美は自分ちに帰らせといて。」


「隆太先輩、消毒ありがとうございました。」


椅子から立ち上がると、手首を掴まれ、


「陽緋ちゃん、翼んち行こう。」


「え?廣田くんち?」


「急ごう。」


隆太先輩があたしの手を引っ張って、昇降口に行く。


「あっ!陽翔、チャリ貸して。部のヤツ!」


自転車置き場の隅にある、古びた自転車を出し、


「乗って!」


と言う隆太先輩の後ろにあたしも乗る。


陽翔は、ポカーンとした顔で、あたしたちを見送っていた。

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