第61話

実は、アタシたちは、初めて同士だ。


付き合いだして、何回目かのデートの別れ際、正和はキスしてきた。


足を踏ん張ってないと倒れそうなくらい、唇を押し付けられるキスだった。


それから2、3カ月たった頃、正和のアパートに遊びに行ったとき、キスされたあと、床に押し倒され、


「寝る。よか?」


と訊いてきて、アタシは何だか怖くなって、首を横に振った。


拒絶されたことがショックだったのか、正和は、首にかけていた、汗臭いタオルをアタシの顔に被せ、ベランダに出てタバコを吸い始めた。


その態度にも、若干イライラした。

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