段々仲良く

第35話

国立大学を卒業して、ホテルに就職した。


卒論を言い訳に、試験勉強がままならないまま受けた公務員試験に全て落ち、合同企業説明会に出ていたこのホテルの担当者に惹かれ、入社試験受けたら合格したのだ。


担当者は感じのいい、物腰の柔らかいオジサンだった。

こんな人がいる会社なら、きっといい会社だろう、そう思ったのに。


同期の早苗と真澄、先輩数名も同じように思って入社したらしい。

けど、その担当者はいわゆる窓際族で、勤務中酒を飲んでるだとか、アルコール臭がするとか言われている。


研修はそのオジサン(人事の内藤課長)から受けたが、研修が終わり、内藤課長とフロント3人娘の打ち上げが終わると、なんの関わりもなくなってしまった。



翌日から、『研修中』バッジもなく、ロビーやロータリーで送迎をしたり、色んな仕事を教えてもらいながら、アタシたちは動き出した。

暫くは3人同じ時間に出社、退社する。


ある日、退社時に、たまたまロータリー近くで、早苗と信号待ちをしていると、フロントの人が

「上がりですか?」

と、アタシたちに話しかけてきた。


早苗が会話モードに入ったので、3人で話すことになった。

名札を見ると『黒石』と書いてあった。


少しすると観光バスが到着したので、私服のアタシたちは黒石さんに挨拶して、寮へと歩を進めた。



「黒石さん、わりとイケメンなんだけど、服の趣味がねー。」


「早苗、もう名前知ってるの?しかも私服まで?」


「あったり前じゃん。全てチェック済みよ。

だって、ただいま彼氏募集中だもん。」


「そうですか……」

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