第29話
「おいしかった。ごちそうさまでした。
おなかいっぱい。」
「それはよかった。」
「ちょっと歩こうか。」
手を差し出され、迷っていると、左手を取られた。
「手を繋ぐぐらい、いいでしょ?」
創くんは外で手を繋がない。そもそも二人で近場デートなんてしたことない。
あの時の遠出デートだけは手を繋いでくれたっけ。
でもあのあと、あんなことがあるなんて…。
「考え事してる顔もかわいいね。」
「イキナリそうきます?口がうますぎですよ?」
「僕は思ったことしか言わないよ。」
「ハイハイ。ありがとうございます。」
「美咲って、国立出てるんだって?」
「ええ。ホントは公務員になって、今頃安定した生活を送っている予定だったんですけど、卒論が大変で、公務員の勉強できなくて。というか、公務員試験、範囲広すぎなんですよ!で、全滅でした。」
「そうなんだ。でも、お陰で美咲に会えて嬉しいよ。」
「言ってて照れません?」
「全然。美咲は怒った顔も、笑った顔も、困った顔も、全部かわいいよ?好きだよ。」
「言われる方が照れるのでやめてください。」
かわいいって言われるの、くすぐったいけど気持ちいい。好きだって言われるのも。
「名残惜しいけど、そろそろ帰ろうか。」
帰りの車では、満腹のため睡魔が……
どうせ頑張っても瞼は落ちてくるし、田原さんなら許してくれるだろう。おやすみなさい。
「美咲、そろそろ着くよ。」
視界に入った風景は、創くんのアパートの近く。
あ、アパートが見えてきた。
車の時計を見ると2時過ぎ。
今はフロントに入ってる時間。
「ありがとうございました。」
「また電話する」
スーパーに寄って買い物をする。
最近外食多いし、ちゃんと作って食べよう。
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