第137話

「…主任?」


「ごめん。ちょっと頼み忘れたことがあって。

悪いんだけど、カノジョ、お借りしますね。」


タクシーの運転手さんに急かされて、篤史はタクシーに乗り込んだ。


「主任?」


「あ、関、お疲れ。俺、安藤さんと、社に戻るわ。」


訝しげな顔をした関さんを残し、義仁さんは私の腕を引いて会社の方へと歩いていく。


「なんですか?頼み忘れたことって。」


歩きながら尋ねてみる。


「…さっきの男と、ずっと一緒だったの?

奏の部屋に、二人で帰ろうとしたの?」


立ち止まり、ビルとビルの間に私を押し込んだ義仁さんは、怖い顔をして訊いてくる。

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