履歴書を見て

第35話

冬になった。


あの夏に見たマイボトルのコの記憶が、新しい記憶に上書きされつつある頃、たまたま人事にいる同期に用があって、人事部に訪ねていった時のことだ。


見るとはなしに、部長の机を見ると、マイボトルのコの履歴書が置いてあった。


キレイな、きちっとした字で書かれていた。


「なあ、もう新入社員の配属先、決まったの?」


「これから決めるみたいだよ。」


「俺、このコが欲しいな。」


「ん?かわいいよな。タイプなの?」


「字のキレイな事務のコがほしいんだよ。

木原さんの字って、特徴がありすぎて、困るんだよね。」


「ああ、あの、かなり斜めった字ね。部長に言っとくよ。どうなるかは、知らないけどな。」


「頼むよ。」

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