第11話 さゆり参上

俺達は、大介から手に入れた地下室を改造し、クリアケースに入っていた大量のフィギュア達は、一部を残し消えていた、部屋の真ん中にテーブルを配置し皆んなが使える様にしたのだ、そして、昼休み、薄く暗い部屋で俺達は、神妙な面持ちでテーブルを囲んでいた。

「現時点での皆んなのランクを教えてくれるかしら…私は、七千八百五十三ポイントでBランクよ、もうすぐAランクに届くわ」

「向日葵は、ね三千六百九十一ポイントだよっ」

「この中では、拙者が一番低いでござるね、千百三十九ポイントでござる」

 俺は、静かに震えて居た、何で皆んな、そんなにポイント高けぇんだよ!まだ入学して三ヶ月くらいしかなってないだろ!えっこれ俺が間違ってるの?

「で貴方は、何ポイントなのかしら?」

「ひゃ……ゃく…百ポイントです…」

「はぁ…まぁそうよね…」

「純太殿、拙者のポイントを分けるでござる!」

「お恵みは、いらねぇよ!自分これから稼ぐからよ!」

「くぅ〜カッコいいでござる!」

「やめろよ!照れるだろうが!」

「アッハハ百ポイントなんか学校歩いてたら入って来るレベルだよ?どんだけモテないんだよ」向日葵は、膝を叩きながら笑っていた。

「はぁお前にだけは、言われたくねぇんだよ!まぁGランクに騙されてる様じゃお前も大した事ねぇんじゃねぇの」俺は、皮肉を込めて言った。

「うるさいわね!あれは、あんただけの力じゃないでしょうが!童貞が調子乗ってんじゃねぇよ!」

「童貞は、傷付きやすいんだよ!もっと優しく接しろ!」

「あんたは、向日葵の敵なんだから優しくなんかしないでしょうが!バカッじゅ…」

 その向日葵の声を遮る様に情報を聞きに来た者が拠点に入って来た、そして、同時に純太のラヴポイントが上昇した。

「ピコンッラヴポイントが上昇しているよ!ピコンッラヴポイントが上昇しているよ!」

「えっえー!ラヴポイント上がってんだけど…」俺は、目を疑った、百ポイントから微動だにしなかったのに今は、それが数ポイント上昇している、そして、皆んな俺のラヴウォッチを覗き込んだ。

「こんな事があり得るのかしら…」

「また誰かに手伝ってもらったんじゃないの?」

「ありえないって事は、ありえないでござる」

「あのー」とスピーカーを通して声が聞こえてくる。

「お客でござる」

 大介は、PCの前に座りマイクに向って話すとござる口調がなくなっているのが分かる、マイクを通して声が変換される様だ。あっちからの声も変換されるみたいだ、良くニュースでやってる犯人の情報を語る人みたいになっている。

「あんなの言う事だったら聞いてあげなくもないんだからね」

「私…好きな人が居て…その人の事を知りたくて…今日その人に彼女が居なかったら下駄箱にラブレター入れようと思って…キャッ言っちゃった」

 俺は、ゴクリッと唾を飲み込んだ、さっきのラヴポイントの上昇に突然の相談者これに因果関係がないはずがない。

「その人の名前は?」

「八王子…純太くんです…」

 俺は、それを聞いた瞬間椅子から崩れ落ち天に両の手を合わせた。

「天地がひっくり返り返ってもあり得ないわ」

「ぜ…絶対に罠よ…そうに違いないわ…」

「純太殿情報を渡してもいいでござるか?」

「いいよいいよ減るもんじゃねぇし」

「ちょっいいのほんとに」

「俺を好きな子を疑うんじゃねぇ!あの子は、きっと天から舞い降りた天使みたいな子に違いない!大介カメラないのかよ!」

「情報屋には、守秘義務があるでござる!これは、拙者の心情でござる」

 向日葵は、大介の髪を引っ張った、大介の顔は、エイリアンみたいな顔になっていた。

「今度からカメラ付けなさいよ〜ねぇわかった〜ねぇ〜」

「分かりましたから引っ張るのをやめてくだされ〜」パチンッ皮膚が戻る音がした。

「はぁはぁ死ぬかと思ったでござる」

「あの〜」

「申し訳ないでござ…ないわ八王子 純太、二千五十五年八月十五日生まれ、中肉中世、シングルマザー家庭の三兄弟の次男、持っているAVは、姉系、ギャル系、清楚系と目立った趣味は、ないわ、後、現在彼女は、居ないわ」

「お前なんで俺のAVの事知ってるんだよ!」俺は、大介の首根っこを掴み左右にゆらした。

「拙者の努力の賜物でござる!地道に情報収集したでござる!」

「あー良かった彼女居ないんだ〜ふふっ」

「料金は、ラヴポイント百よ、浮かび上がる学校の紋章にラヴウォッチを当てなさい」

 すると大介のラヴウォッチにポイントが入って来たのだった。

「大介!これで稼いでたのかスゲェな!」

「大した事ないでござるよ!」

「ありがとうございました!」と依頼者は、外へ出てった。

 俺は、外へ出ようと走り出すが皆んなが服を引っ張り止めたのだ。

「離してくれ!俺は、行かなければならないんだ!」

「やめなさい!何かがおかしいわ!」

「向日葵の時みたいにどうせ罠なんだからやめときなさいって!」

「信じたい気持ちは、分かるでござるが一旦冷静になってくだされ!」

「これは、俺の戦いだ!ほっといてくれっ!」と学生服を引き千切り強行突破した。

「待っててくれっ俺が今すぐに行くっ!」

 俺は、下駄箱へと到着した。

「はぁはぁ」鼓動が速くなっているのがわかる、走ったからなのかラブレターに心踊らせているのかわからなかったが取り敢えずパッチを踏んだ。

「いたっ」恐る恐るラブレターを開いて見ると、可愛らしい丸文字で書かれた文章で埋められていた。

「八王子純太くんへ

私は、貴方の笑った顔を見る度に胸は、キューッと締め付けられ弾みではち切れそうになってしまいます、こんな気持ちになったのは、これが初めてで凄く緊張しながら書いてます、私の気持ちを受け取ってくれるなら放課後校舎裏まで来て下さい♡さゆり」

 はち…はち切れるってどんだけ爆乳なんだよん、さゆりちゃんか〜どんな子なんだろ〜古風な爆乳ちゃんか…へへっまいっちゃったなと俺は、放課後までの時間を過ごした。

「ふっふんふんふーふんふん」

「その気持ち悪い鼻歌やめてよ」

「あらごめんあそばせ〜」

「舞い上がり過ぎでしょっどうせ罠だって」

「言っとけ俺は、さゆりちゃんを幸せにしてみせる!」

と俺は、さゆりちゃんとの待ち合わせ場所へと走った。

 遠目から見て一人で佇んでいるのが見えた。

「おーまーたーせーさーゆーりーちゅあーん」

「゛えっ…」

 俺の声に反応したさゆりは、振り返った、そして、その姿を見た瞬間、目は、徐々にカッピラキ、顔から血の気が引いていくのがわかった、自然と身体が方向転換しようとしていたが、もう遅かった…

「あたしの愛しいじゅんたーん来てくれたのねん、やっと会えて涙がでちゃうわ!来てくれたって事は、私と付き合ってくれるのねん!」

 俺を抱き締めていたのは、筋骨隆々なオカマだったのだ…女子制服に身を包んでいる、柔道部員に化粧した感じだ。

「゛い゛やーー」

「あっあの男は、西城 悠里…」

「あんた知ってんの?」

「この学園で幅を利かせている西城一派の頭目でごさる、あの男、学園のあらゆる漢を食い漁っているらしいでござる、純太殿も運が悪い、こんな方法で男を釣っていたとは…」

「自業自得よ…私達の忠告も聞かないんですもの」

「そりゃそうだ」向日葵と大介は、頷いた。

 俺は、背骨をへし折られるそうになっていると、校舎の影に隠れている三人の姿が目に入っ来た。

「゛おいー説明しで゛ないで、ダズげでぐれー」

「ほっといてくれって言ったのはどこのどなただったかしらね」

「いいじゃん純が想像した通り爆乳だし…ふふっ」

「ふんっ」さゆりが力むと胸のボタンが弾け飛び爆乳が露わになったのだ。

「゛い゛やーー」

「申し訳ござらん!純太どのー!助けられぬ拙者を許して下されー」と三人は、校舎の影から姿を消した。

「゛くそーあいつら俺を見捨てやがってー」

「さぁ邪魔者も居なくなった事だし、今までの分、二人の時間を大切にしましょー」

「ぶチュー」さゆりは、分厚い唇を近づけてくる。

「俺と何処で会ったんだよ」

「教えてあげない…」とさゆりは、真剣な顔を向けて来る。

「それじゃ俺も思い出せないだろーが!離してくれー」

「もう離さないんだから」

 さゆりは、より一層強く抱き締めたのであった。

「ピコンッピコンッラヴポイントが上昇しているよ」

「ぶチュー」

「゛た゛す゛け゛て゛く゛れー」

 こうして俺は、Fランクへと昇格したのであった…

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