第3話 愚者
「そりゃ、僕だって国の為に働きたくないさ。でも、これは昔からの僕の性分なんだ。人が誰かの悪口を言ってたら聞き逃したことはないし、迷惑かけるってことはそうしたら楽なんだろ。やらせてあげるべきだよ。もちろん、僕がそうなった時でも同じことを言ってあげるつもりだ。」
「遅かれ早かれ隣国と戦争が始まる。どうせ、ここにいても兵隊に取られるだけだろ。俺は戦争が始まったら、参加してもいいさ。だって、剣の腕はあるから、死なないもの。そんじょそこらのやつなら負けないので儲かるぐらいだ。でも、お前は違うじゃないか。考え直せよ。」
「でも、俺は将来、考えたことないし。お祈りに行ってから返事をしていいかい。」
「あんなやつらを信じるな。神様は何かの方便で実際にはないんだから。」
「マット、何を言ってるんだい。アーテー様はこの世に存在するよ。イグノア大陸の真ん中にはアーテー様が奇跡で作られた大きな谷があるんだから。あの谷がアーテー様の存在する証拠だよ。」
「お前はここで一生、ひつじの毛刈りをして終わるつもりか。」
「悪くないよ。」
マットはうんざりして一息ついた。
「リボルタがさっき言ったことは本当かい?」
「何のこと?」
「人の悪口を聞き逃したことがないってことだよ。」
「うん、まあまあ、そうだね。」
「都会に行くとそれは悪いやつがいるんだ。彼の共和国の総督は金に汚いやつだ。金をもらってルールを捻じ曲げるから、表向き馬鹿正直なやつが処罰されてるけど、誰もルールなんて守ってるやつはいない。総督の地位を利用して仕事の説明をしなければならないからと女性を食事に同席させてる。」
「総督を辞めさせたほうがいいね。」
「そうだろ。そんな悪い奴は誰かが正さなければならない。」
「だよな。同感だよ。」
「これだけは言える。お前は死んだり投獄されるかもしれない。それでも放っておいてはならないのだ。あんなやつは辞めてしまえ。」
「そうだな。誰もできないなら、やってあげたほうがいいのかもな。」
「でも、お前が羊の毛刈りをしていると総督はのさばったままだ。羊飼いを辞めなければならない。違うかい?」
「ああ、全くその通りだ。」
「もう一度確認するけども、冒険に出るとリボルタは怪我をしたり死んでしまうかもしれない。いいんだな。」
「今日はマットの話を聞けて良かったよ。都会がそんなヒドイ状態になっていたなんて。一度、町がどうなってるのか見に行ってもいいかもしれない。」
「断然、そうだよ。一緒に冒険者になろう。」
マットとリボルタは大笑いして堅い握手をした。
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