王太子は女になりたい!-転生先間違ってます!-
さくらもち
第1話転生したら推しでした!?
転生、それは生まれ変わること
どの世界の、どんな時代に生まれ変わるかは、未だによく分かっていないけれど、また新しい人生を迎えると、そう私は認識している。
今世の人生を終えた者達が、また新しく生をなす。
彼らが次は、どんな姿でどう誕生するかは、実際にその場に転生してみないと、誰にもわからない
私の生きていた前世で、特に話題になっていた小説、ゲーム、アニメは、ほとんど転生のお話が多かった。
転生物はすごく流行っていて、もちろん生前の私も、楽しく読ませてもらっていた。
ただ、こんな話、実際はありえないでしょう?
なんて、そう思いながらも、こんな世界があったら楽しそうだぁ、なんて。
ちょっとだけ、希望を持ちながら読んでいた。
もしも、こんな世界があって、私も生まれ変われたなら、やっぱりヒロインがいい!そう、思いながら。
そして自己紹介が遅れましたが、私の名前は宝城るび、16歳。
ごくごく普通の元気で明るい高校生
いつも通り、喫茶店のバイトが終わって帰宅しようとしていた私は、たまたま車に轢かれそうなお婆さんを見つけた
横断歩道を確認すれば青、お婆ちゃんはそれはそれは、ゆっくり歩いていた。
なのに、車は信号が青だというのに、スピードを抑えるどころか止まる気配がない。
流石にやばいと思った私は、必死になって駆け寄り咄嗟にお婆さんの背中を押した。
きっと、もう少し私が早く走れていれば、どちらも助かっていたはずだろう
けれど、もう過ぎたことを悔いるのはしょうがない
私の身体はほんの一瞬の出来事で、呆気なく暴走車に吹き飛ばされた
空中に投げ出された身体は、地面に落ちるまでの間、時が止まったような感覚だった
でも、それはほんの一瞬で次の瞬間には激しく地面に打ち付けられた。
その衝撃で私の体は、聞いた事のない音を立てコンクリートの上をゴロゴロと転がっていったのだ。
正直、車と衝突した時よりもこの、硬いコンクリートに全身を強打した方が痛くてたまらなかった。
ジンジンと頭が脈打ち、何が起きたか理解する前に、頭から流れる生暖かい何かに気づいた私は、もう目を開けているのも辛くなり、ゆっくりと瞼を閉じた。
視界がぼやけていく寸前、先程のお婆さんが心配そうに私に声をかけていた姿を見て、お婆さんの無事を知った私は、最後に人助けができてよかったと、心から思った
次に、目を覚ませばさっきまでのゴツゴツとしたコンクリートの上ではなく、とても寝心地の良いベッドの上だった。
ここは、病院…?
あの後、救急車に運ばれてどうにか助かったのだろう
もう、死んだと思っていた私は、助かった事に安心した。
ふと、隣でシクシクと鳴き声が聞こえ、先ほどのお婆さんだろうと、視線を向ければそこにいたのは、金髪の派手な女性
こちらを眺める彼女の瞳は何故か、キラキラと宝石のように輝きを放っていて、こんな瞳を見たのは初めてで驚いた。
というか、お婆さんじゃない事にも驚いて一瞬意味がわからなかった。
彼女は私を見るなり、とても驚いた様に大きな声を上げた、
「ゼニス!?…やっと目を覚ましたのね!!」
泣きそうな顔で、私の顔を覗き込むこの美しい女性は、なんか、やけにどこかで見た事がある顔だ
しかし、こんなに綺麗な人、知り合いにいたっけ?
戸惑う私を気にすることなく、女性は私の手を握りしめ、そして何度も私の事をゼニスと呼ぶ
いやいや、私の名前はるびで、決してゼニスではない
何度もそう呼ぶ彼女へ、違うよと否定しようと声を出した時、急に激しい頭痛に襲われた。
それはまるで、鈍器で頭を殴られた様な痛みで、私は咄嗟に両手で頭を抱えると、その様子を見ていた女性は、すごく心配しながらまた私の事をゼニスと。
だから、私はゼニスじゃない。
ちゃんと否定したいのに、更に激しい頭痛に耐えきれず、私はそのまま、また気絶するように深い眠りに落ちた。
夢の中で私は、もう一人の人物の記憶を辿っていた。
その記憶は、高校生の私じゃなく、やけに派手な金髪に、先程の美女とよく似た顔をしている人物の記憶
急に誰かの記憶が頭の中に吹き込まれてきて、その瞬間、私の名を呼ぶ美女が何者なのかすぐに理解できた。
結論から言うと、宝城るびは前世の私で、今この体の持ち主は、
ゼニス・アレキサンドライト
先程から彼女が呼んでいるゼニスは、彼女の息子。
その彼に、私は何故か、転生した様だ
私はというと、結局あの事故で出血多量により、高校生という若さで呆気なく命を落としてしまったという事。
最悪な展開なのだが、何故か私は、冒頭で言っていたように違う世界、異世界に転生したみたいだ。
しかし、なぜだろう……なんで、私は男なの??
うん、そうだ、きっと、神様が送り先を間違ったに違いない
じゃなきゃ、ヒロインでも悪役でもなく、こんな男主人公になっているなんて、絶対におかしいって!
ねぇ、神様…私の最後は人助けですよ!?
しかも、この命をかけて守ったんですけど…?
まぁ、でも?とりあえずは、運がいいことに、彼の事は偶然にもよく知っていたからまだましだ。
この世界は、転生前に話題だった小説【聖女の宝石箱】、コレに出てくる王太子が彼、ゼニスだ
この小説は、宝石がモチーフになった異世界ラブロマンス
この国、アレキサンドライト王国は魔力を持つ大体の人が、宝石眼を持って生まれてくる。
その、瞳の色の濃さや、輝きによって魔力量を図るんだけど、逆に色が薄い、或いは輝きがなく宝石眼ではない普通の瞳は、殆ど魔力を持たないか、少ないかのどちらか。
ちなみに、それぞれの宝石眼によって使える魔法が異なってて、属性によっては、色も格も全く違う
例えていえば、この国で1番の魔法は光魔法
そして、
その頂点に立つのがアレキサンドライトの瞳を持つ王族
この国ではそれぞれ色んな宝石眼によって属性がある
アメジストは闇、ガーネットは炎、タンザナイトは氷
シトリンは雷、スフェーンは風
みたいな感じで、それぞれの宝石眼によって使える属性が違う
ちなみに、この中で公爵の位にあたるのが
闇、炎、氷、この御三家
もちろん、貴族の中にも色が薄い人は結構多いらしい。
けれど、宝石眼じゃ無い魔力なしは本当に稀
魔力なしと言えば、平民ぐらいで貴族の殆どは微量な魔力を持って生まれてくる。
その中で色がより濃く、輝きのある宝石眼の者だけが、その一族の頂点に立つ権利を持てるっていう、結構厳しい世界なのだ。
こーんな、厳しい世界でヒロインがゼニスに出会い、だんだん惹かれ合い最終的には2人が結ばれるっていうラブロマンス小説。
この作品は学生にも結構人気で、実際小説からゲームにもなった神作品
小説で他にもヒロインに恋をしていたイケメン達4人も加えた恋愛ゲームは、小説ファン曰く、ヒロインと結ばれなかったイケメン達を救済するゲームと、言われていた。
ちなみに私もしたけど、王道のゼニス編しかしてないので、その他がどんなストーリーだったかは、まじで分からない
けど、他のストーリーもかなり面白い様で、友達が徹夜する程ハマっていた。
まぁ、そんな作品の中に転生したんだから、実際は泣いて喜ぶべきなんだろうけど、私は全く喜ぶことができないでいる
だって…
私の推しは、この国一番の美貌を持つ王太子ゼニスなのだ。
その推しに!恋するほど好きな彼に!
…なんでよりにもよって転生するのよ?!
まだ、ヒロインなら飛んで喜んだだろう
でも、推しに転生した私は、この時点でもう詰んだも同然。
これは、罰としか思えない処遇だ。
人を救ったというのに、神はまさか、私にヒロインと恋愛しろって会いたいのだろうか?!
それは、絶対に無理!!
体は、ゼニスだけど心は完全に16歳の女子高生なのだ
けれど、いくら嫌でも結局は、この国を背負って生きていかなければならない運命。
いくらヒロインと恋愛しないと言っても、王族なんだから、きっと位の高いお嬢さんや、もしくは隣の国のお姫様なんかと、政略的な結婚を勧められるかも…
もしも、そうなれば自ずと後継も必要になってくる
そう、考えれば考えるほど、泣きたくなる
もう、本当に、誰よ…
私を男に転生させたのはっ!
転生先、絶対に絶対に、間違ってますからぁあ!
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