2-2 命懸けのスニーキングミッション

<前回までのあらすじ>

 邪教ラーリスの手に落ちたという村へ向かった冒険者一行。

 しかし、村の周辺を魔界から来た猛獣、アザービーストが闊歩していた。


ガンデイン:「村に入る前から堂々とアザービーストの群れってなぁ、どういう了見だァ? いくらラーリス信者に支配されてるっつったって、あんなに堂々と魔界の生き物を召喚するなんて思い切りが良すぎるだろうがよ」


アロン:「この村はもう魔神の巣窟になっているのかもしれないな……」


ガンデイン:こんな調子じゃあ、のこのこ正面から村に入るのは危ねぇかもしれねぇなぁこりゃ。GM、遠目に見える村の様子はどんな感じだ?


GM:遠目に見て分かることはそうですね、村の中もアザービーストたちが徘徊してます。


ピッピ:この村はもう終わりだっぴ


アロン:「一体一体を倒しても意味がなさそうだな。元凶であるラーリスの神官プリーストを叩かないと」


セリーナ:「そうですね……でも村のどこにいるやら……」


ガンデイン:「どうするよ兄貴。うまいこと力貸してくれる村人でもいりゃいいんだが……」


アロン:「魔神達に見つからないように、少し周囲を探索してみよう。村人の生き残りやラーリス神官がいるかもしれない」


ガンデイン:「了解! オイラぁ、隠れたりはできねぇから、最悪の時は置いてってくれや」


アロン:「きみひとり置いてくなんてことはできないよ」


セリーナ:なんかいい感じのアイテムとか誰かお持ちではありませんか?(仲間たちのキャラクターシートに目を通す) ピッピちゃんの〈コモン・ルーン〉くらいしかないですね……。


***


 一行は村の周辺の森を探索し、森にもアザービーストの足跡を見つける。

 仮に住人が村の外に逃げたとしても、森の中でアザービーストに出会ってしまえば命はないだろう。魔神に滅ぼされた自分の故郷のことを思い出し、アロンは拳を握りしめる。


 少しでも魔神の脅威を減らすためにアザービーストと戦うか、隠れてやりすごすかで意見が分かれた。

 アロンとセリーナはアザービーストと戦うべきだと主張し、ピッピとガンデインはやりすごすべきだと反対した。


 結局、話し合いの末ガンデインの銃弾は温存しながらアザービーストと戦うことにした。


***


アロン:「そういえばピッピ、魔剣のもう片方はどういう能力を持ってるんだ?」こんなにアザービーストが多いのも魔剣の仕業かもしれないから確認しとく必要があるな。


セリーナ:「たしか魔剣〈デーモンスレイヤー〉でしたね。やっぱり文字通り魔神殺しの剣なんですか?」


GM:魔剣〈デーモンスレイヤー〉は魔神を死に至らしめる力と、副次的にその権能をちらつかせることで魔神を従えることができる力とが秘められていることをピッピは知っているよ。


ピッピ:「デーモンスレイヤーには魔神を死に至らしめる力と、副次的にその権能をちらつかせることで魔神を従えることができる効果があるっぴ」


セリーナ:「デーモンスレイヤーには魔神を死に至らしめる力と、副次的にその権能をちらつかせることで魔神を従えることができる効果があるんですね」


アロン:「セリーナ、もうピッピは交易共通語で話してるんだから通訳しなくていいんだよ」


セリーナ:「はっ!? つ、つい……」


ガンデイン:「魔神使いは召喚した魔神を従えるのに苦労するっつーしな……とすると、魔剣の力でこんだけたくさんの魔神アザービーストを使役してんのかねぇ」


セリーナ:「魔神殺しの剣を魔神が持っているというのも変な話ですね。うーん、六方塞がりです……」


アロン:「二方は開いてるのか?」


セリーナ:「このまま突貫する選択肢と一旦帰ってみるという選択肢が一応……とはいえ、この状態の村を無視はできませんし、玉砕というのもダメです。何か他に手は……」


ガンデイン:「できるだけ端っこの家にでも忍び込んでみるか?」


ピッピ:「やはり潜入っぴか? 潜入ならピッピが適任っぴよ」


セリーナ:「ピピピッピ……!」


アロン:「そうだね、もう少し村の中の様子を探りたい。今帰ってもハルーラ神殿に報告出来る情報が少なすぎる」


セリーナ:「ピピピッピ! ガー。ガー。」


ガンデイン:「急にどうした?」


アロン:「壊れた魔動機の真似? 叩けば直るかな」


ガンデイン:「やってみるぜ」チョップしとこ。


セリーナ:(コロコロ……)ダメージ、クリティカルでました!


アロン:なんでだよ!!


ガンデイン:そもそもなんで急に壊れた魔動機の真似を?


セリーナ:ピピピッピって機械みたいだなって思って……


ガンデイン:く、くだらねぇー!!


アロン:「はあ……ピッピ、危険だけど潜入頼めるか?」


ピッピ:「元はと言えばこれはピッピの問題。ここまで付いてきてくれて助かっているくらいなんだから気にしないでいいっぴよ」


GM:それじゃあピッピひとりで村に潜入するんだね? スニーキングミッションに挑戦するなら隠密判定を振ってみて。


ピッピ:(コロコロ……)出目は2,2の4。隠密基準値は8だから12だっぴ。


セリーナ:不安になる低さですね。

「何かあったら戻ってきてくださいね、少し後ろで見てますから」


GM:それじゃあピッピは村はずれの家に忍び込んでみる。しかし、人の気配は感じられない。


セリーナ:床下とかに隠れているんでしょうか?


ガンデイン:なんだろうな? どっかひとところに集められてんのかもしれねぇぜ。


GM:さらに村の中心部へ向かっていくと、ハルーラのシンボルが破壊された教会の屋根に邪教ラーリスのシンボルが描かれた旗が立っているのが見える。


ガンデイン:コッテコテだなぁ、オイ。


セリーナ:許せねえっぴよ! お前たち汚らしいラーリス信徒どもの血で、折った旗を洗ってやるっぴ!


ピッピ:ピッピ、そんな過激なこと言わない……。


GM:頼むから、公式連載になることを思い出してセリーナはお行儀良くして!


アロン:話を戻そう。ピッピが教会の窓から中を覗くくらいは出来るかな? 流石に中に入らせるのは怖い。


GM:できるよ。窓際までかがんで近づくと元ハルーラ教会の中からは人の声がする。


セリーナ:元ハルーラ教会……いえ、今はラーリス教会でしたね。


GM:どうやら生き残りの村人は皆、この教会の中に集められているようだ。ラーリス信徒と思しき男が鞭を持って暴力で彼らを支配しているのが見て取れる。


アロン:コッテコテだなあ!


セリーナ:とはいえ、なんとなくですが人が集められている場所がわかったのは幸いですね。何人残っているかはわかりませんが……あの石臼を回させられている村人たちを早く救出しなければ……。


アロン:石臼の描写とかあった?


セリーナ:捕虜といえば石臼から突き出た棒を回しているものでは!?


ガンデイン:まぁよくある奴隷の使い方ではあったけどもよ。


アロン:ラーリス信徒がそれをやりたいなら召喚した魔神にやらせれば済むだろう。


セリーナ:私が10割ボケやってるせいで空気が緩んで状況がコメディになっている気がしますが、実際の事態はかなりヤバいことになってますね。


ガンデイン:冗談言ってる場合じゃねぇやな。とりあえずこの教会に突入してみっか?


セリーナ:そうですね、とはいえ何があるかわかりません、慎重にいきましょう


GM:あっ、そうだ。追加の説明になるけど教会の中には魔神の姿は見当たりません。


セリーナ:むっ? つまり……村人に化けた魔神ということでしょうか? 人間に化けるような魔神なんていましたっけ?


ガンデイン:いるわ。前回のシナリオのボスとして出てきただろ!


アロン:なんだか、ぐっだぐだだなあ……。


ガンデイン:まぁ隠れてる、とかはあるかもわからん


セリーナ:冗談はともかく警戒して損はないですね。


アロン:まあ一旦ピッピには村の外まで戻ってきてもらって皆で行こうか。


ピッピ:それじゃあ、戻ってきてかくかくしかじかするっぴ。


セリーナ:ピッピちゃんはえらいですね。お姉さんがなでてあげましょう。


ピッピ:ふふん。


 ピッピの危険を冒した決死の潜入で村人の集められている場所を特定した一行。

 次回、ラーリス信徒との決戦の時……!

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