1-5 闇ギルド潜入作戦
<前回までのあらすじ>
魔剣と〈コモン・ルーン〉、そして約2千ガメルの大金が入った金貨袋を盗まれてしまったピッピ。
遺跡ギルドの構成員サギーの調べにより、荷物を盗んだのは〈無印の葡萄酒亭〉という未認可の闇冒険者ギルドであることが判明する。
一行は盗まれた品物を取り戻すための算段を練るのであった。
GM:と言うわけで遺跡ギルドから情報を持ち帰った君たちは冒険者ギルド支部〈烏の濡れ羽亭〉に戻ってきた。
ガンデイン:「どーしたもんかねぇ。……闇ギルドってやつの規模がどんなもんかわかんねぇけどよ。正面から突っ込んで事を構えるのはヤバそうだぜ」
セリーナ:「そうですね。ここはいっそ……正面から押しかけて実力で取り戻すしかないのではないでしょうか!」
ガンデイン:「セの字はそっちであやとりでもしてろ」
セリーナ:「そうですね。アロンくん、こっちであやとりをしましょう」
アロン:「いや、俺もガンデインと作戦を考えるけど……」
セリーナ:「じゃあ私も作戦を考えます! う~ん。ピッピちゃん、何かアイデアはありませんか?」
ガンデイン:「考えるっつったからには少しくらい自分で考えろよ、オメー!」
ピッピ:「ピッピも考えるっぴ。ん~。ん~。ん~」プスプス
セリーナ:「知恵熱でピッピちゃんが壊れました!」
ピッピ:「ん~。閃いた……! その闇ギルドとやらにお金のない冒険者のふりをして近づく…とかどうだっぴ?」
アロン:所持金総額500ガメルにも満たない俺たちが、お金のない冒険者なのは演技するまでもなく事実だけどね(笑)
ガンデイン:「まー妥当なとこか……。ただ向こうにこっちの顔が割れてっかもしれねーからな。特に盗みに入られたピの字はよ」
ピッピ:「お金のない冒険者の演技するっぴ。はあ~ピッピ、お金ない。明日泊まる場所の宿代の当てもない。ピッピ。ふところ寂しい」
セリーナ:「かわいそう……!」
ガンデイン:「演技がクソ雑過ぎる。演技だけじゃなくて、なんかこう変装とかできないもんかね」
ピッピ:シーフ技能で変装判定するっぴ。(コロコロ……)出目は3,3で達成値が14。
ガンデイン:「そんな変装じゃセの字ぐらいしか騙せねぇぞ」
セリーナ:「私が騙されやすいっていうんですか!?」
ガンデイン:お前は現在進行形で詐欺にあってるだろ(笑)
少し言葉の調子が強いけれど面と向かってこういう言い合いができるのはプレイヤー同士の仲がいいからなんだろうな。本音をぶつけ合える良いパーティじゃないか。
ガンデイン:オイラたちもまぁ、髪型変えるぐれぇの簡単なイメチェンぐらいはして行くか。
ピッピ:「ピッピ、変装した。カンペキ」
セリーナ:「ピッピちゃんかわいいです! 子供みたい!」
ガンデイン:「だぁらよぉ! オメーからすりゃガキみてーでもよぉ! グラスランナーとしては成人しててもおかしくないってことがオイラは言いたいの!」
ピッピ:「ピッピ、実家に子供いる」
セリーナ:「えっ」
ガンデイン:「え!?」
アロン:「え゛っ!?」
ピッピ:「子ども達を食べさせるために、ピッピ稼ぐ! 貧乏な冒険者の演技、こうでいいっぴ?」
ガンデイン:「ビックリしたぁ! 本当にオーファンだか言う土地に子どもがいるのかと思った」
アロン:ああ……心臓が止まるところだったよ。ピッピには死に別れた妹を重ねて見てたから、子持ち既婚女性だったら性癖が壊れるところだった。
セリーナ:「なりきるなら母親役じゃなくて子ども役の方が似合う見た目だと思います……」
ガンデイン:「いいんだよグラスランナーなんだから大人でも子どもでも。ふつーふつー」
ピッピ:「じゃあピッピ、セリーナお姉ちゃんの子ども」
ガンデイン:「やめろ、やめろ。ややっこしいから!」
ピッピ:「アロン、父。ガンちゃん、祖父!」
ガンデイン:「髭生えてっけどオイラぁ、まだ16ゥ!」
セリーナ:「ふふっ、祖父!」ガンデインを指さす
ガンデイン:「祖父じゃねぇっつってんだろ!」
アロン:「俺だってピッピくらいの大きさの子供がいる歳じゃないよ」
ガンデイン:「ゼェーッゼェーッ。……オイラたちぁ食い詰めた冒険者。それ以外はいつも通りでいいだろ」
セリーナ:「食い詰めてるのもいつも通りな気がします!」
ガンデイン:「……。まぁな!」
アロン:「とりあえず方針はまとまったかな」
ガンデイン:「これで行こうぜ、兄貴」
セリーナ:「頑張りましょう! アロンくん、ピッピちゃん!」
ピッピ:「おー!」
アロン:「不安だ……」
セリーナ:「大丈夫、お姉さんに全部任せなさい!」ふふん
アロン:任せられないんだよなあ……
***
準備も済んだところで一行は遺跡ギルドから聞いた闇ギルド〈無印の葡萄酒亭〉のあるスラムへと向かう。
周囲の建物同様、ボロい外観からはまともな運営がされていないであろうことがありありと伺える。
軋む音を立てる扉を開けて中に進むと、白い髭を長く伸ばした人間の男が一行を出迎えた。
「いらっしゃい。注文は?」
アロンたちは〈無印の葡萄酒亭〉は表向きは酒場であり、注文時に合言葉である『井戸水の水割り』を頼むことで闇ギルドへと案内されると遺跡ギルドのサギーから教えてもらっている。
「井戸水を頼むよ、水割りで出してくれや」
ガンデインが合言葉を言ったのを聞いて白い髭の男は歯茎が見えるほど大袈裟な笑顔を浮かべると、ついてくるように手振りで示し店の奥の扉へ足を向けた。
***
白い髭の男(GM):「お前さん達、合言葉を言ったってことは職を失った冒険者だろう?」
セリーナ:「はい! ここで働きたいです!」
白い髭の男(GM):「なるほどねぇ、表ではやっていけない事情ってやつがあるんだろう? うんうん、分かるぜぇ~。世間ってのは厳しいもんだよなあ。俺はギルドマスターのジョン=ドゥ。仲間からは"大笑いの"ジョンなんて呼ばれてる」
白い髭の男→"大笑いの"ジョン(GM):「俺もねぇ、戦力になる冒険者ならすぐにでも雇ってやりてえんだが……。あいにくとウチのギルドにはもうしっかり働いてくれる冒険者がわんさと居てねえ。宿はウチの酒場で床にでも寝るっていうなら飯代くらいの仕事は回してやれるんだけどなあ」
アロン:「た、頼むよ。もうここだけなんだ。今更、真っ当な仕事にも戻れやしないんだ!」
ガンデイン:(兄貴、食い詰めの演技がうめぇな……! 流石だぜ……!)
"大笑いの"ジョン(GM):「まあ、働きたいっていうのを突き返してやるんじゃあ寝覚めが悪い。昨日、ウチのギルドが遺跡から見つけてきた宝物を換金してきてもらうくらいのお使いは任せられるか」
アロン:「へ、へぇ、宝物ですかい?」
これは、当たりかな?
"大笑いの"ジョン:「と言っても、お前さん達がそのまんま宝を持ち逃げしないとも限らねえし、どうしたもんかねぇ」
ガンデイン:「持ち逃げなんてしねぇ、信じてくれよぉ!」
"大笑いの"ジョン(GM):「そうさなぁ、それじゃあまずはあんた達が万が一、持ち逃げした場合の保険として2千ガメルほど預けてもらおうか」
アロン:「食い詰めた俺たちに……そ、そんな金あるわけないだろ! 払えねぇよお」
"大笑いの"ジョン(GM):「まあ、俺も手ぶらで送り出すってわけじゃねぇ。昨日、ぬす…取ってきた物の中に古びたロングソードがある。なんらかの魔法がかけてあるらしいんだが、どうにも使い方がわからなくてな」
アロン:(古びたロングソード、間違いない。ピッピの魔剣だ)
"大笑いの"ジョン(GM):「そのロングソードを誰かに2千ガメルで売ってくるといい。鑑定書を偽造でもして稀少な魔剣だと謳って売れば2千ガメルくらい用立てられるだろう?」
セリーナ:「売買の仲介をすればいい、ってことですか?」
"大笑いの"ジョン(GM):「そう言う事よ」
ガンデイン:「そ、そうは言ってもよォ……。そのロングソード、使いっ古しのボロなんだろ? 売れっつったって……」
"大笑いの"ジョン(GM):「口八丁で魔術士ギルドの学者さんでも丸め込んできな。まあ、それができないって言うなら仕方ねえ。寝る場所を貸してやるから無給での雑用から始めてもらうしかねえか」
セリーナ:「そんな……」
"大笑いの"ジョン(GM):「そうさなあ。……2千ガメルを用立てる他の方法の提案があるとすりゃあ。噂によると魔術師ギルドが昨日から被検体になるグラスランナーを募集してるのは知ってるか? あんた達の中にはちょうど役に立たなそうなグラスランナーがいるじゃないか? そいつを魔術師ギルドに売るってのはどうだ?」
ピッピ:「ぴえ!? ピッピ、売られる?」
ガンデイン:「おいおい、勘弁してくれよ!」
セリーナ:「そうです! 魔動機文明初期のルーンフォークならいざ知らず、現代では人身売買はそう簡単にできないんですよ!」
"大笑いの"ジョン(GM):「そうでもねえのさ、嬢ちゃん」
ガンデイン:「こいつがいなくなったら、オイラたちの斥候役がいなくなっちまうぜ!」
"大笑いの"ジョン(GM):「ドワーフの男なら漢らしく体で罠探知しな」
ガンデイン:「め、メチャクチャ言いやがる……」
セリーナ:実際、ピッピちゃんが来る前は私たちどうやって
アロン:俺は
ガンデイン:「……わぁった、わぁったよ。……どうせ交易共通語も喋れねぇ田舎モンだ。しょうがねぇ。とにかく2千ガメル用意してくりゃいいんだろ。どうにかしてくるよ」
"大笑いの"ジョン(GM):「ぎゃはは。待ってるぜぇ、2千ガメルの算段がついたら古びた剣を取りにまた来な。算段がつかなかった時はまあ、……そん時もまた来な。危ない橋を渡らにゃならん裏の仕事ってやつを紹介してやるよ」
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