1-2 オーファンから来た少女
<前回までのあらすじ>
冒険者アロンと弟分のドワーフ、ガンデインの2人は空に開いた銀色のゲートから落ちてきた
少女を連れた2人はアロンの怪我を治療するため、仲間の神官がいるハルーラ神殿へ向かうのであった。
GM:待たせたね。今回からプレイヤーDさんのキャラクター、エルフのセリーナの登場だ。合流前にキャラクター紹介をしてくれるかな?
プレイヤーD:名前はセリーナローズ・トゥラスピラ。気軽にセリーナお姉さんと呼んでくださいね!
GM:セリーナはどうして冒険者になったのかな?
プレイヤーD→セリーナ:もともとはエルフばかりが住んでいる隠れ里の出身で、里に一つだけある導きの神ハルーラ様の神殿で神官見習いのようなことをしていたんですけど……。弟が病気になって、お金が必要になってしまって。それで、お金目当てで冒険者になるべく里の外に出てきたんです。
ガンデイン:健気なねーちゃんだな。
セリーナ:弟は最近ちょっと気丈にふるまって「もう大丈夫だ」と嘘の手紙まで送ってくれているので、早くお金を貯めて里に戻ってあげないといけないですね。がんばらないと。
ガンデイン:健気な弟さんじゃねーか。
セリーナ:かわいい弟ですよ。アロンくんみたいで!
GM:たしか病気の弟さんは祈祷師に診てもらったんだよね?
セリーナ:はい! 家にいらっしゃった祈祷師の方が言うには、治療には10万ガメルもするお高い薬が必要らしくて……。
「そんな大金、すぐには用意できない」と言ったら祈祷師の方は別の町へ行ってしまったので、お金稼ぎと合わせて、その祈祷師様の行先も探さないといけないんです。大変大変。
ガンデイン:ん? ……最近、弟さんは元気そうなんだよな?
セリーナ:はい! 最近は自分の足で庭を歩けるようになったらしくて。
ガンデイン:直球に言うけどよ。オメーそれ、祈祷師を騙る詐欺師に騙されてたんじゃねーか?
セリーナ:……?
アロン:……故郷に帰る休暇くらいは取っても良いよ。その目で弟さんがまだ病気に苦しんでるのか様子を見てきた方がいい。
セリーナ:いえ、お金を貯めて弟くんを治してあげないといけませんから、貯まるまでは帰れません! いっぱい稼いで頑張りましょうね!
ガンデイン:お、おう……。まあ本人がそういうスタンスならこれ以上の口出しはしねぇけどよ。
セリーナ:好きな食べ物は紅茶です。トレードマークは眼鏡です! 口癖は「許せませんね!」です! よろしくお願いします!
GM:よろしくね。それじゃあアロンとガンデインが、グラスランナーの少女を連れてセリーナの待つ冒険者ギルドに来たところから再開しよう。
***
血だらけになったアロンをガンデインが支えてハルーラ神殿まで運んだ。
セリーナはアロンの怪我を見ると音を立てて椅子から立ち上がった。
「詳しく。詳しく説明してください。なんでアロンくんがこんな大けがを負うようなことになったんですか?」
セリーナがガンデインの顔をじっと見て問い詰める。普段は温厚なセリーナにしてはかなり険しい顔つきだ。
「心配してくれるのはありがたいけど、ガンデインを責めないでやってくれ。俺が未熟だっただけだよ」
セリーナの神聖魔法による治療を受けながらアロンが間に入り、簡単に何があったかを説明した。
「噴水広場にゃ戦えるやつがオイラたちしかいなかったんだから、ほっとくわけにゃあいかねぇじゃねぇか」
「……それは、そうですね」
確かにその状況であれば自分でもそうしたなと少し納得し、セリーナは語気を弱める。
「ありがとう、セリーナ。だいぶ楽になったよ。きみ、グラスランナー語喋れただろう。この子と話せるかい?」
「喋れますけれど……この可愛い子はどなたですか?」
ガンデインの後ろに隠れるようにして少女はセリーナの方を伺っている。
「信じられないだろうけど空から魔神と一緒に降って来たんだ」
「なんか交易共通語を喋れねぇんだよ、こいつ」
セリーナが首をかしげる。
「不思議ですね。どれだけ未開の出だとしても、だいたいのグラスランナーは好奇心で交易共通語くらいは喋れるようになっていると思うんですが……」
「とにかく話してみてくれないか?」
セリーナが「私の言葉が理解できますか?」とグラスランナー語で問いかけると、少女は笑顔でぶんぶんと顔を縦に振った。
***
GM:それじゃあプレイヤーBさん、君の出番だ。
アロン:なるほど。このグラスランナーがBさんのキャラクターだったってわけか。
プレイヤーB→ピッピ:おっ、ようやくアレクラスト共通語の通じる文明人がきたっぴね。「わ、ようやく話せる相手が来てくれて嬉しいっぴ!」
セリーナ:「通じました、かろうじて」
ガンデイン:話せるみたいでよかったな
セリーナ:「お名前は何ですか?ご出身は?」
ピッピ:「名前はピッピ・パット・ヘム。出身はオーファンだっぴ!」
セリーナ:「オーファン?」知らない土地ですね……どこかの未開地域でしょうか。
ガンデイン:オーファンねぇ。知らねぇ地名だな。
セリーナ:嘘をついているようには見えませんし、おそらくは他大陸から渡ってきたのでしょう……。
ピッピ:冒険者技能は
セリーナ:レンジャーはともかくシーフって言うのは……? 聞いたことのない技能ですね。
ピッピ以外の3人のプレイヤーはソード・ワールド2.5をやりこんでいるが、彼らから見るとピッピの
ガンデイン:「ああそうだ、なんだって魔神と一緒に出て来たんだオメー?」交易共通語が通じないからセリーナに通訳してもらうぜ。
セリーナ:「なんだって魔神と一緒に出てきたんだオメー?」通訳しましたよ。
アロン:「そのまま言ってないか?」
セリーナ:「そのままを伝えました」
ピッピ:「ピッピはオーファンより持ち出された2本の魔剣を取り戻すために、魔神を追って『魔界』へ渡り、艱難辛苦を乗り越えてようやく人間界に帰ってこれたところっぴ」
ガンデイン:「魔界ィ!?」
ピッピ:「その魔剣のうち1本はまた持ってかれちゃったけど、そこのお兄さんのおかげで1本は守りきれたっぴ。お姉さん、お兄さんに感謝を伝えて欲しいっぴ」
セリーナ:「アロンくんに『魔剣を守ってくれてありがとう』だそうです」
アロン:「どういたしまして。それにしても魔界に入って、そこから帰ってきたグラスランナーか。ここが酒場なら与太話として聞く類のものだけど、そういうわけじゃなさそうだ。何より、魔剣が目の前にあるわけだしね」
ガンデイン:「実際に魔神と一緒に落ちて来たとこ見たわけだしなぁ……」
ピッピ:「そうだ、お礼をしないと!ピッピは恩をちゃんと返すグラスランナーだっぴ! ……と言っても魔界でお金の類は紛失したので魔剣以外で出せるものって言うと……」がさごそ……がさごそ……「【ライト】の〈コモン・ルーン〉とかでどうっぴ?」
セリーナ:「【ライト】の……なんと?」
ガンデイン:「あァ? なんだこりゃ」
ピッピ:「〈コモン・ルーン〉。魔法の指輪だっぴよ? 知らないっピか?」
ガンデイン:「あれか。〈レインボーリング〉の親戚か? 見たことねぇな」
〈レインボーリング〉
さまざまな色の光が灯せる魔法の指輪。価値にして5千ガメルほど。
ピッピ:「『光れ!』」とコマンド・ワードで命じると指輪から辺りを照らす光が溢れ出すっぴ。
ガンデイン:「おおー、〈レインボーリング〉の親戚みたいなもんだな」
セリーナ:「1色だけしか出せない〈レインボーリング〉、ですか」
ピッピ:「む。思ったより食いつきが悪いっぴね。【ライト】以外にも【エンチャント・ウェポン】や【カウンター・マジック】なんかも持ってるっぴよ。魔法の品だし、しかるべきところに売ればそれなりの額にはなるはずだっぴ」
セリーナ:「機能から考えると、売値はおおよそ2千ガメルくらいでしょうか?」
アロン:GM、俺たちには魔法のアイテムを買い取ってくれるような知り合いはいるかな?
GM:そう言う話になるならアロンくんは魔術師ギルドに魔法のアイテムについて研究しているサイモンと言う友人がいたことを思い出していいよ。
アロン:「そういえば、友達のサイモンが魔法の品物について研究していたな」
ガンデイン:「ほんじゃ兄貴のお友達のところで鑑定してもらいに行くか。……ピッピっつったか。お前も一応ついてきた方がいいんじゃねーか? 交易共通語も喋れねぇんじゃ、ほっぽり出されても困るだろーしよ」
アロン:「そうだね。いいかな、ピッピ」かがんで目線を合わせて聞いてみよう。
セリーナ:では通訳します。
ピッピ:ぶんぶんと首を縦に振るっぴ。
セリーナ:可愛らしいですね。頭をなでなでしてあげます。
ピッピ:ふんす。
ガンデイン:「……そいつが
セリーナ:「私よりは年下だから大丈夫ですよ、たぶん!」
ガンデイン:「年下でも大人かもしれないからって言ってんだけどな、オイラは」
アロン:「僕らはセリーナがいくつなのかも知らないけどね……」
ピッピ:エルフは長命だからきっとセリーナお姉さんのほうが年上っぴね。
ガンデイン:それはそれで偏見だろ。エルフだって最初から大人として生まれるわけじゃねえからな。まあ、いつまでも年齢の話してても仕方ねえや。兄貴の友人のいる魔術師ギルドに向かおうぜ。
GM:それじゃあ、きみたちはこの指輪を鑑定してもらうためにサイモンのいる魔術師ギルドに向かうことにした。セリーナは神殿のイト=メー司教様に外出することを伝えに行ってね。
セリーナ:イトとメーどっちが名前ですか?
GM:イトが名前で、メーが苗字。
セリーナ:種族と性別は?
GM:人間の男性だね。
ガンデイン:(司教のコマが糸目なのを見て) うさんくせぇ糸目!
セリーナ:こら、ガンちゃん。人を見かけで判断しちゃいけません!
GM:イト=メー司教はこの街で一番大きな神殿であるハルーラ神殿の司祭に若くしてなった男だ。左手の薬指には指輪が光り、キツネの
セリーナ:それはめでたいですね。なんだか私も嬉しいです。
GM:セリーナが事情を話し、通訳としてグラスランナーのピッピに付いて魔術師ギルドへ行ってくることを伝えると、司教は快く許してくれた。
さて、今回はここまで。次回は魔術師ギルドに着いたところから始めよう。
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