あの日、あなたは確かに17歳だった~木下唯の場合~

第1話

父が、死んだ。


 五歳になるまでは大好きだった父が、私の知らない遠い町で死んだ。


 小学校に上がる頃には大嫌いになっていた父が、一人っきりで死んだ。


 中学生になるまで大嫌いだと思い続けようとしていた父が、罪を背負い込んだままで死んだ。


 それでも、やっぱり大好きだった父が、ある一人の少女に謝り続けながら死んだ。ずっとずっと、謝り続けながら死んでしまった。


 私は、どうしても知りたかった。


 母と私を置き去りにして、たった一人っきりで罪を背負わなければならなかった父の事を。そして、その根本に立ち尽くしているであろう、17歳の少女の事を。


 そして、現在。彼女と同じ17歳になった私は、十三回忌のその日に、彼女の弟であり、同じクラスメイトの男の子の家の前に立っている。彼女の親友だったという女の人に詰られながら。


「……何であんたが、こんな所にいるんだよ!?」

「帰んなさいよ!」

「本当、信じらんないわ! あんた、どのツラ下げてここに来た訳!?」


 きっと、女の人の大声を聞き付けて飛び出してきたんだろう。玄関先で、その男の子が大きく目を見開いているのが視界の端に映る。それでも思っていた以上に……ううん、自分でも驚くくらい、私の心は静かに凪いでいた。


 大丈夫、これくらいの覚悟は決めてきた。だから、大丈夫。


 どんなに父や母が頑張って、今の私を作り上げてくれていたとしても、私が「加害者側の人間」である事に、少しも変わりはないのだから……。

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