第二章

秘密

第63話

…何だろう、遠くの方から騒がしい声が聞こえているような気がする。


 徐々に浮上していく意識の中、須藤大和が最初に思ったのがそれだった。


 まぶたはまだ開かないが、聴覚はしっかりしている。耳をすましてみると、よりはっきりと聞こえてきた。


「こちらは警察病院の前です。レッド・ティアーズを捕らえようとして負傷した刑事が搬送され…」

「本日予定されていました公開処刑は、『委員会』が極秘に進めていたCase.41の隠れみのであったと同時に、レッド・ティアーズ残党を捕獲しようと…」

「今回の件について、『委員会』は次のようにコメントしています…」

「すみません。今回の作戦失敗についてお話を…!」


 どうやらマスコミがニュースの中継を挟んでいたり、あわよくばこの場で取材しようと試みているようだ。


 …あれ?今、警察病院と言わなかったか?誰か怪我でもしたのか?まさか、轟木さんとか…!?


 須藤はまぶたに力を入れて、一気に覚醒した。


 そのまま腰のバネを使って跳ね起きるつもりだったが、さらに力を入れようと大きく息を吸い込んだ瞬間、胸の中心から鈍い痛みが走り、須藤は思わず「うぅ…」と呻き声をあげた。

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