第16話

「朝っぱらから、何の用だ?」

「金ができたから、また教わりに来たよ」

「おいおい、勘弁しろよ」


 ベッドの側にあるチェストの上の飲みかけの缶ビールを手に取り、大樹は苦笑を浮かべる。整った白い歯並びが、ちらりと見えた。


「昨夜も頑張ってたんだからな?」

「今の女…、客?」

「ああ、どっかの社長の一人娘でな。かなりの太客だ」

「マクラ営業、ご苦労様」


 皮肉を込めて、早紀は言った。


 大樹は家のマンションより三駅ほど離れた繁華街にあるホストクラブ『Love Night』の売れっ子ホストで、年は二十一歳。


一番下っぱの雑用から始めて三年、ようやくたくさんの指名客を得てきた頃に、街で偶然出会ったのが早紀だった。


「ホストでも、やっぱ客は選ぶんだ?」

「十七の小娘は、枝客にもならないからな」


 缶ビールの中身を全て飲み干し、大樹が再び苦笑を浮かべる。むっとした早紀は持ってきた数万円を、勢いよく部屋の中に巻き散らかした。


「これで一回分だよね?」


 早紀が言った。それと同時に、次々と服を脱ぎだしていく。

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