思い出と共に

影山 みはつ

第1話  祥

祥が「直人。お前、最近、何もやってないだろう?」と注意を受けた。

直人が「僕は何もしてないよ。ただ、祥お兄ちゃんの邪魔だけはしたくなくて、でも、僕は・・・」と時々言葉が途切れた。

祥が「何だよ。直人は本当に怖がりなんだな」と直人の頭を撫でた。

野良犬が「ううう、ワンワン」と泣いて今にも飛びついてきそうな牙を剥きだしていた。

祥が「何だ?やるのか?噛んだら承知しないからな」と石ころを投げて、犬の顔に当てた。

犬はキャンキャンキャンと泣き出して、祥達を憐れむように逃げ出した。

直人が「お兄ちゃん、もう行った?」と祥に声を掛けると、祥が「お前もお前だろう?男だったら、ちゃんと前を向いて犬に立ち向かわなきゃ駄目だろう」と怒りを露わにした。

直人が「だって、怖いものは怖いもん」と祥を見て怯えていた。

祥が「しょうがないな。こういう時は、お前も何時か兄ちゃんになるんだ。一人で何でもやらなきゃならなくなる、分かっているよな?」と指を差した。

直人が「はい、ごめんなさい」と祥に向かって涙を見せた。

夏子が「祥。直人。もう家に帰るわよ」と大きな声が聞こえて来た。

祥が「やべぇ?怖い母ちゃんだ。早く帰らないと叱られる」と急いで滑り台から去って行った。

夏子が「あら?直人じゃない?探したのよ。あれ?お兄ちゃんは?」と周りを見渡しても居なかった。

直人が「お兄ちゃんは、家に帰ったよ」と夏子に話し掛けた。

夏子が「お兄ちゃんは、家に帰ったのね。じゃ、行きましょうか」と公園を後にした。

直人は「今日ね。お兄ちゃんと遊んだの」と笑顔で夏子に話していた。

祥は、自分の部屋のベッドで、横になって居た。

グーグー寝て居ると夏子が「祥、勉強は終わったの?」と祥の部屋のドアを叩いた。

祥は「え?何も出来て居ない。さっき、直人と遊んで居たから」と夏子に返事を返した。

夏子が「しょうがないわね?高校生の家庭教師でも雇おうかしら?」と祥の事を考え、携帯から連絡を取った。

夏子が「あ、すみません。家庭教師でお願いしたいんですが、大丈夫ですか?」と電話口で頼んだ。

電話口から「分かりました。では、後ほど伺わせていただきます」と電話を切った。

夏子が「祥。今から高校生の家庭教師が来るから、待っていて」と祥に声を掛けた。

祥が「何だって?家庭教師なんかいらないのに」と憤りを感じていた。

夏子はガタンガタンと階段を下りて行く。

祥が「全く母ちゃんは、教育ママだからな?こう見えて、何も勉強にも困って居ないのにさ」と嫌になって居た。

夏子が「家庭教師が来たわよ」と玄関から大きな声で呼んだ。

祥が「え?家庭教師?怠いな」と頭を掻いて玄関に向かって行った。

玄関から「初めまして、私は兼田 裕実と言います。いつも、裕実とか裕ちゃんと呼ばれています。よろしくお願いします」とお辞儀を丁寧にして居た。


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