第13話

「ただいまぁ。」

夜8時半。いつも通りにマンションのドアを開ければ。


「おかえりなさい。お疲れ様。」

笑顔で迎えてくれるママ。


「最近楽しそうね。」

バイトから帰った私にママが声をかける。


「うん。凄く疲れるけど楽しいよ。」

笑って答えたら


「例のアロハの先輩?」

笑いながら聞かれた。

アロハの先輩。和真くんの事だね。


「違うよ。お客様に素敵な人がいるの。」


「へぇ。比名子にもそんな人出来たんだ。」

いや、違うんだけど。

ママが嬉しそうだからいいか。それに『理想の父親を見つけた』なんて聞いたらどんな顔されるかわからない。

私が生まれる前に死んじゃったパパ。

何度再婚話を持ち込まれても何だかんだ理由を付けて断るママ。

きっと今でもママはパパを愛してる。

でも、それとは別に私の存在がママの結婚の邪魔をしてるんじゃないかって気になったりもしてるんだ。


「私よりママはどうなのよ。」

思いきって聞いたら


「ママはもういいの。」

なんて素っ気ない返事。何時もの事だけど。


「もったいない。」

そう思うのは私だけじゃないと思うよ。

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