第5話

ランチタイムが終わってほっと息をつけばもう4時前。


「比名ちゃん。先に休憩行っといでよ。」

和真くんが声かけてくれるけど。


「私は後でいいし。和真くん先どうぞ。」


「腹減ってねえの。」

首を傾げる和真くん。

いつもなら2時過ぎには交代で休憩を取るんだけど、今日は凄く忙しくて随分遅くなってしまっていた。

正直お腹ぺこぺこだけど


「比名ちゃんは彼をまってるのよねぇ。」


「圭子さん!」


鈴木圭子すずきけいこさん。今日同じシフトで働いてるバイトの先輩。

ハタチの女子大生で和真くん狙いの一人だ。どうも和真くんと仲良い私が気に入らないらしいんだけど。そんな心配要らないのに。


「へえ、比名ちゃん待ってる彼なんていたんだ。」


「知らなかったんだ。」

楽しそうに聞き返す圭子さん。


「うん全然。どんな彼?」


「もうっ!二人共からかわないでくださいっ。」


あ!!


「噂をすれば…。」

圭子さんにクスクス笑われたけど無視無視。


「いらっしゃいませっ。」

とっておきの笑顔でお迎えする。


「今日も元気だね。」

穏やかな低いバリトン。落ち着くなぁ。


「いつもの席でよろしいですか。」


「ああ、頼むよ。」

彼をいつもの席に案内しながらチラリと振り向けば、圭子さんはニコニコ和真くんは唖然と此方を見てる。

ふん。ほっといてよ。

てか誤解されてるんだろうなぁ。

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